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3章の4

「ぐっ!」

 コンクリートの地面にしたたかに身を打ち付けた。

「珠希!」

 思わず飛び出そうとした晴道。

 すっ、と伸ばされた白衣の腕によって道を阻まれる。

「更紗っ」

「落ちつけ。気に食わないが加減されている」

 珠希の体は、元の位置から数メートルも側方に吹っ飛ばされている。

 しかし更紗は既に、冷静に容体を見極めたようだ。案の定、珠希は呻きながらも起き上がった。

 そして自分を殴りつけた人物を睨み据える。

 香田は少し離れた所に立ち、素知らぬ顔で珠希を睥睨していた。

「その派手な銃が断罪銃パニッシュね。と言うことは、あなたが死刑執行官の八ツ坂珠希」

 余裕に満ちた声音。

「オルタが私たちを裁こうとするのは勝手だけど……その手段が銃なんて、浅はかね。照準が明白な飛び道具は足があれば避けられる。そんなこともわからないの?」

 失笑が漏れる。そして組んでいた腕が解かれると同時、再び彼女の姿が消えた。

 がつっ

 鈍い殴打音。晴道はその、最悪な顛末を示す音に思わず目をつむっていた。

 が、呻き声の代わりに聞こえたのは、

「だったら珠希よりオレ様が相手だな」

 好戦的に言い放たれたセリフ。

 異様な一人称の主は、確認するまでも無い。

 香田は驚いた表情で、前進を阻んだ少女を見つめていた。

 いつの間に。

 たった今まですぐそこに立っていた小柄な少女は、いつの間に珠希の前に立ちはだかり、自分より遥かに身長の高い香田の動きを腕と肩を使ってブロックしていた。

「なっ!」

「オルタがガンナーだけだと思っちゃ大間違いだぜ?」

 ばっ、と二人の体が正反対に弾け合う。香田がミラを振り払い、ミラも跳ぶことで反動を制したのだ。

 ふふん、とミラは得意げに鼻を鳴らす。

 対峙する二人の向こうで高柳が言う。

「この小僧は自分の筋力を増強するタイプだな。香田、お前はこの小僧の相手をしろ」

 命令が癪に障ったのか、香田は苛立たしげに顔をしかめる。

「……あなたが命令しないでちょうだい。私が従うのは久澄室長だけよ」

「なんだ? 痴話ゲンカかよ。余裕こいてると……」

 ミラの言葉が途中で途絶えた。

 同時、その小柄な体が高々と宙を舞った。

 ミラの立っていた場所には、拳を天に突き上げる香田の姿。ミラがアッパーカットを食らったのは一目瞭然だった。

 しかしその後、ミラが辿った動きは、先の珠希と全く違った。

 殴られたにも関わらず空中で身をくるりと翻し、まるでジャンプをしただけのように両足での着地をこなす。ふわりと揺れる銀灰色の髪。

 少女は顔を上げ、香田を見据えた。顔からは笑いが消え、実力のある相手との対峙であることを、結んだ唇に示し出した。

 香田は体勢を直すと、ミラに向かって言った。

「同じような突然変異でも、全身に分散させるより一点集中の方が勝っている事、その体に教えてあげるわ」

 二人の姿が、再び超速域へとかき消えた。

 変異種同士の戦闘を初めて目の当たりにした晴道は、言葉を無くしていた。

「あの香田とかいう奴、脚力のみを爆発的に増加させる〝俊足ファストフィート〟の持ち主だな。おまけに突然変異抜きにしても、相当な訓練を積んだ人物のようだ」

「……ミラは大丈夫なのか」

 ようやく一言問う。

「筋肉系同士だ。あいつに任せておけばいい。それよりも気になるのはあの男の方だな」

 更紗は、埠頭の先に立ったままの高柳へと視線を向けていた。

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