同人誌 「魔法少女マジカルふとちゃん」
【作品情報】
題名 魔法少女マジカルふとちゃん
制作 まぜもの
HP https://mazemono.fau.jp/
Pixiv ID 147203
発行日 2012/04/22
印刷所 ねこのしっぽ様
【主な登場人物】
現在修行中 物部布都
道場の師範代 神子師匠
謎の悪女 せーが
マスコット ヨシカちゃん
【あらすじ】
魔法少女マジカルふとちゃんのややエッチな山場のシーンが最初に挿入されていて、すぐに外部からコメンテーターのような立場で「魔法少女マジカルふとちゃん」の説明がなされる。その後、悪者という呼称の悪者が幻想郷に現れ、上位存在として今回扱われている「せいじゃ」が何かを企むシーンが続き、その後反転して、神子の道場で、神子師匠との安寧な暮らしだけを望むふとの様子が描かれる。そこでその安寧な暮らしを脅かす悪者が現れ、「そこのお嬢さん、魔法少女にならない?」と問う「せーが」が現れる。そのまま魔法少女ふとちゃんとしての戦いが描かれる。
【感想】
幻想郷のキャラを用いた魔法少女モノというよりかは、魔法少女を幻想郷に持ち込んだらどうなるのか、という話だったと感じていて、そのため幻想郷のキャラの魅力が引き立っていたように思う…
前回の「もこけーね」の同人誌と比べてやや肌の露出が多めの健全同人誌だったのでワクワクしながら読めたようにも思う。幻想郷は現実世界で忘れ去られた事物が流入する場という設定があるので、幻想郷に魔法少女が来たというのは、現実世界から魔法少女が消えたのかもしれないな。
【魔法少女以前への感想】
まず感想でも書いたが、この作品は魔法少女ものというよりも魔法少女を取り入れた幻想郷のキャラクターに着目した作品であると私は考えている。
というのも、冒頭は魔法少女としての布都ちゃんが悪者と対峙するシーンが挿入されているが、その後は普通の布都ちゃんで話が進んでいるからだ。神子師匠との親愛な仲をその後描き、神子師匠に「あなたは欲が少ないわね。」と言われ、「神子師匠と一緒にいれたらそれで…」と答えるほどに魔法少女ではない布都の内面が丁寧に描かれている。
だからこそ、「悪者が現れて神子師匠と一緒にいれなくなるのを防ぐために、魔法少女にならないか?」という問いが不自然でなく、布都が受け入れてしまう理由を生み出しているのだ。
魔法少女モノで最も重要とも思われる変身シーンであるが、もちろんこの作品でも変身シーンが描かれている。全部で2回あるのだが、一回めはGガンダムに搭乗する時のような演出で、2回目はトランプのジョーカーを空中に出してそれを解き破ることによって変身していた。変身のバリエーションが豊富だ。
Gガンダムという言葉が現れたが、この作品の始まりも幻想郷でも現実世界でもない劇団のカーテンの裏側のような場所で語り手が語るシーンから始まる。語り手がただのナレーションではなく実際に現れて話す、もしくは世界観から逸脱した別世界軸の場を描写しているということなのだが、これもGガンダムでよく用いられてきた手法なのだ。らき⭐︎すたでもその片鱗が見られる。
私は大量に同人誌を読んできたわけではないが、この作品は東方の世界観を重視しつつ、他のコンテンツの手法なども盛り込んだ非常に二次創作らしい同人誌なのだと感じた。
魔法少女モノでは変身シーンが重要だと言ったが、実はもっと重要な部分もある。それは、「なぜ魔法少女になったのか?」を深掘りして丁寧に描写することである。ここがないと、魔法少女になることの重要性や意味が薄れてしまう。
「魔法少女まどか⭐︎マギカ」では、主人公のまどかは最終話になるまで魔法少女にならなかった。
魔法少女になるというのは魔法少女ものにおいて第二部に移行することと同じくらいのターニングポイントなのだろう。
だから、というのも野暮かもしれないが、この作品では魔法少女になるまでの過程をしっかり書いている。それは、魔法少女でない布都と魔法少女になった後の布都の二面性を強調させて、魔法少女に呑まれない構成を狙ったとも考えられるし、魔法少女ものにおける「魔法少女になること」の重要性を理解した上での構成だとも考えられる。
【魔法少女後への感想】
魔法少女としての戦闘シーンでは、華麗なアクションシーンが描かれるというよりも、マスコットであるヨシカとの関係性に重きを置いているようで、そこに二次創作特有の傾向を見た。アクションシーンをしっかり見せる構成ではなく、あくまでも関係性に注目した理由としては、我々が見たいのは「悪者と戦う魔法少女布都ちゃん」ではなく、「魔法少女になってあたふたする布団ちゃん」だからだ。これは二次創作だからこそ頷ける箇所だと思う。
また、「せーが」がそばにいることで安心して見ることができるし、敵の標的がふとちゃんだけなので、布都ちゃんの反応だけに焦点を当てて安定して見れる。
「スーパー悪戯システム」
「布都ちゃんがピンチになることによってヨシカが真の力を発揮するんだもの」
「…嫉妬パワーかしら」
というこの同人誌の独自性を生み出す用語も生み出されている。これも、短編で忘れやすいという性質に対抗した、記憶に残りやすいからくりだろう。
ちなみに、立て続けのアクションの前に必ず、ヨシカとの馴れ合いが入っている。「お腹減ってるの?」「食べよ。」などであるが、やはり魔法少女でない描写をすることで魔法少女である描写とのコントラストを引き立てる効果もあるだろう。
華扇登場のコメント「表面だけをみていても真実は見えて来ないわよ」
これは、本当に「悪者がひそんでいるようには思えない」という布都の何気ない言葉に対して放った言葉であるが、あとがきでの嘘予告で現れた黒幕は、その影絵での頭についた二つの丸みのある形状から歌仙だと推測できることから、華扇が実は自己紹介をしていたという伏線も考えられる。
あと細かいが、2回目のふとちゃんの魔法少女編げでは、1回目のGgannみたいじゃなく、ジョーカーのカードを突き破るというものであった。
敵の攻撃方法は紙。紙も意外と鋭い切れ味ということかららしい。こういった既存の既知の情報を利用しているのが読者も想像しやすくて良い。そこに読み手のコストを使わせずに読みやすい短編にしているのかもしれない。
【総評】
既存の魔法少女プロットを利用することで、最小限の説明で短い短編の中、さまざまな独自性のある見せ場を作れていたように思った。




