【氷菓】「第二話 歴史ある古典部の活動」
【登場人物】
折木奉太郎
千反田 える
福部 里志
伊原摩耶花
【あらすじ】
第二話では、1ヶ月ほど経過して古典部の部室に慣れはじめた千反田と折木の部室でのやりとりから始まった。そこから、「しんや祭」のために文集を作りたい、そしてそのためのバックナンバーを探そう、という流れで図書館へと舞台は展開した。そこで新たな登場人物、伊原摩耶花が現れる。里志を好いており、折木と犬猿の仲の彼女が語る不思議な話。その解決を成功させた折木に対して千反田の中である決意が芽生える。暗転して喫茶店。千反田が折木を呼んだ理由とは?以上が第二話のあらすじだ。
【感想】
第一話と比べるとかなり独自路線に走ったと感じた。千反田さんの背景、謎多き登場人物の過去と言ったものがこれから明らかになっていくのだろうと感じた。第二話でようやく確信したのだが、この作品は高校生である彼ら彼女らの内面の葛藤に注目して描いているはずだ。それが今回かなり明確に見えたと感じている。詳細は考察で話そうと思う。
【考察】
まず、文春を作りたい。と千反田が言ったわけだが、ここですでに明らかになる要素がある。なぜ、千反田は古典部の過去の活動を知っていたのか?である。一身上の都合で入部した千反田はなぜ、文春の存在を、そしてそれが古典部の伝統であったことを知っていたのだ。
彼女が古典部OB、OGと関係があるのかもしれないと考えるのが普通だ。そして作品で既に出てきているOG、OBは折木の姉のみ。であれば私が第一話での考察で書いたように折木の姉と千反田が旧知の仲であるのかもしれない。しかしここは、まだ断定できない。
文春探しで、図書館へと足を運んだ二人。伊原摩耶花が登場する。折木と犬猿の仲の彼女は何故、早々に里志が好きであることが描写されたのだろうか。
犬猿の仲というのは言い換えればツンデレであり、青春ラブコメにおいては伊原が折木を実は好きである、という考え方ができてしまい、それを防ぐためなのかもしれない。また、新キャラクターは独立して現れると浮いてしまうので、早々に既存キャラクターとの繋がりを見せたかったのかもしれない。
そして分厚い本がなぜ毎週金曜日に貸し借りされるかについての謎の内容自体はそこまで重要ではない。氷菓において重要なのは、謎を伝え考え解決する過程での人物同士の気づきや関係性の変化、機微な動きであるはずだから。
今回で言うと、謎を解いて伊原に驚かれた折木であったが、後の会話で「折木はそんなに頭がいいわけではない。ただ役に立たないことでたまに役に立つ。」と言及されていた。これは非常に重要な言葉で、折木の頭の良さを否定し、必要のない所で能力を発揮する彼の性質を固定させている。そしてこれと千反田さんは成績優秀であるという言及とを組み合わせることによって、千反田さんと折木が対象の存在であることを明確に示している。
千反田さんと折木の性質が大いに違うことを暗に示したからこそ、その後千反田さんが折木に対して声をかける、「彼ならできるかもしれない…」というシーンが引き立つし、背景が見える。
また、千反田さんは成績優秀と言う言葉に対して、「それはただのパーツの集合。大事なのは思考のシステム。」というような返答をしていた。パーツの集合、システムという言葉から彼女が理系的な思考をしていること、そして成績優秀だということを全肯定していない様子から、今の自分では何かうまく出来ていないことがわかる。
そしてその助けを折木に求めたと読める。そしてエンディングテーマ。伊原と千反田が台地の上でシーツに寝っ転がっている。彼女らを覆う金属の網状のドーム。その奥にある星。
普通はここまで気づいていたのなら、こう考える。裕福な家庭の千反田は宇宙の何かを見つけるために「考える」ことができる折木に頼み、成績が優秀なだけでは成し遂げられない宇宙の何かを見つけてほしいという話なのだな、と。
けれどそれは少し違う。もう一つ第二話で伝わる重要な要素があったはずだ。それは、「この作品は高校生の葛藤に注目している」ということ。
図書館で謎を解決した折木が周りの雑談を聞いて何か違う、自分は何故ここにいる、というような感情を持ち、あまつさえその場から離脱しようとした。それに真っ先に気づいた千反田。
実際には図書館の司書を待っていたから折木を千反田は止めたのだが、もしかしたら千反田は唯一話せる折木が去ってしまって自分が置いてけぼりになるのを避けたかったからかもしれないし、それこそ誰よりも耳が良かったから気づいたのかもしれない。
シンナーの匂いに気づいたことからも、彼女の五感は人一倍あることが分かっている。
折木はよく千反田の攻めに照れ、なし崩し的に関わってしまうが、それは彼女が可愛いからだろうか?
いや、それだけではない何かが彼女にあると考えるのがより創作的であろう。少なくとも、折木にとって千反田えるとは自分を必死に薔薇色の世界へ誘おうとする存在だ。それに対して嫌がりながらも完全に拒否することができない。
それは、薔薇色の世界を嫌がりながらも完全に閉ざしたくはないという複雑な高校生特有の感情を表しているのだ。
だからこそこの話はいつまで経っても高校生の葛藤における話にしかならないはずだ。エンディングテーマの宇宙的表現、星の描写も宇宙の謎ではなく、千反田えるの願いであったり、希望などを表しているのかもしれない。
折木が薔薇色の世界と向き合って、最後にどう生きていく道を歩むか、千反田が一身上の都合で入部した古典部でどんなものを見つけるのか、里志が本当にしたいことは何なのか、姉は何故卒業して関わりも減っているはずの古典部が廃部の危機にあることを知っていたのか、伊原は仲間とどう向き合うか、それらが個々にテーマとなって同時にこの物語は進んでいくはずだ。
【雑談】
正直、感情描写や空気の作り方が驚くほど上手いと感じた。特に伊原摩耶花が折木に「謎がわかって嬉しいんじゃないの?」「いや別に。」の後の「あっそ!!」と急に怒るシーンが鳥肌モノだった。
普段嫌いな相手が突然活躍して、少し驚き高揚している彼女がその解決した本人に少し丸く問いかける。けれど、元々高揚も何もない折木は普段と変わらず「いや別に。」と応える。それに対して折木に対して少し優しくした自分の言動や、それを内心では馬鹿にしていそうな折木に対して急に恥ずかしさと怒りが芽生えて、「あっそ!!」と放つ。
極めてリアルな心理劇が為されていて驚いたのだ。
あと、千反田さんだけかなりラブコメらしい動作や表現が使われているのと反対に、古典部同士の会話や伊原との会話は至って平凡でリズムも崩れている。間があったのに変化のない同じトーンで言葉が続くなど、意図的に会話の流れを崩していると感じた。そしてこれは、千反田さんの時と意図的に差別化しているのだと考える。
だからこそ、折木の考える灰色の世界がこの平凡なトーンでの間の多い会話で、千反田さんの折木への行動が薔薇色の世界であると私は直感的に思った。
これは薔薇色の世界に折木を誘う千反田さんという位置付けをより強調するものであり、千反田えるが折木にとっていかに異質な存在かを強く魅せていると私は受け取っている。
まだ第二話しか見ていないが、今後の展開に期待している。
京アニはやはり動きが良い。




