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神に転生したが、石像から動けない ―管理社会における神性観測記録  作者: 鷹宮ロイド


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第25話 成功例の拡張

 成功例は、増えていく。


 被験区域の拡張は、もはや特別な判断を必要としなかった。既存のデータが揃っており、成功率も高い。手順は確立され、説明も簡潔だ。


適用条件:既存成功例に準拠

安全性:確認済み

推奨:実施


 その文言が、次の区域を呼び出す。


 エリオ・クレインは、承認一覧を確認しながら、淡々と処理を進めていた。判断は速い。迷う理由がない。


 各地からの報告は、似通っている。


 事故なし。

 健康被害なし。

 生活影響、確認されず。


 制度として、理想的な拡張だった。


「……広がるの、早いですね」


 リア・ノートが、端末を見ながら言った。


「成功例ですから」


 エリオは、そう答える。


 成功例は、共有される。

 共有されれば、適用される。


 それが、合理的な流れだ。


 だが、報告書の端に、小さな注記が増え始めていた。


住民からの問い合わせあり

内容:不安感/落ち着かなさ

原因:特定不能

対応:説明済み


 どれも、同じ処理がなされている。


 説明は正しい。

 数値は正常。

 問題はない。


 エリオは、その注記を特別視しなかった。

 問い合わせは、いつの時代にもある。


 リアは、少しだけ視線を止めた。


「……内容、似てますね」


「心理的反応でしょう」


 エリオは、即座に答える。


「環境変化があれば、多少は」


 リアは、頷いた。


 反論はしない。

 反論できる材料がない。


 昼休憩の時間、施設の外で、簡単な打ち合わせが行われた。


「新区域でも、同様の問い合わせが出ています」


 担当者が言う。


「ただ、数値はすべて基準内です」


「なら、問題ありません」


 その結論に、誰も異を唱えなかった。


 問題がない以上、対応は不要だ。


 その日の帰り道、リアは遠回りをした。


 理由はない。

 ただ、足が向いた。


 神殿の前には、数人の人が立っていた。


 祈ってはいない。

 話してもいない。


 ただ、石像を見ている。


 リアは、少し離れた場所から、その様子を見た。


 不思議と、騒がしくはない。

 集会でも、儀式でもない。


 立って、しばらくして、帰っていく。


 それだけだ。


 その光景は、どこにも記録されない。


 神殿は、依然として設備扱いだ。

 利用者数は、基準以下。


 問題は、ない。


 その夜、エリオは、拡張計画の最終確認を行っていた。


成功例:拡張完了

次段階:準備中


 数字は、美しい。


 それを見ながら、エリオは、ふと考えた。


 ――なぜ、問い合わせが増えている?


 すぐに、その思考を打ち消す。


 説明は済んでいる。

 納得しないのは、感情の問題だ。


 制度は、感情を扱わない。


 だから、世界は進む。


 神殿では、その夜も、石像が立っていた。


 声は、出ない。

 反応も、ない。


 だが、立ち止まる人は、少しずつ増えている。


 それは、成功の裏側で、

 誰にも管理されないものが、静かに広がり始めている兆しだった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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