表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神に転生したが、石像から動けない ―管理社会における神性観測記録  作者: 鷹宮ロイド


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/34

第24話 それでも、失敗は起きる

 被験区域の拡張は、予定通り実行された。


 手続きは簡潔で、迷う余地もない。

 過去の成功例が並び、承認は自動化されている。


区分:成功例

次段階移行:問題なし


 その文言が、最後まで変わることはなかった。


 マルタは、その通知を直接見ることはない。

 見る必要がないからだ。


 生活は続いている。

 朝は起き、身支度をし、外に出る。


 ただ、選択肢が少しずつ減っていった。


 遠出をしなくなった。

 人混みを避けるようになった。

 会話の途中で、言葉を選ぶ時間が長くなった。


 誰も、異常とは言わない。


 医療検査では、問題なし。

 心理評価も、基準内。


 「生活に支障はありませんか?」

 その問いに、マルタは少し考えてから答える。


「……今のところは」


 それは、嘘ではない。


 ただ、前と同じ生活ではないというだけだ。


 日記のページは、短くなった。


今日も異常なし。

静かで、落ち着いている。


 その文の裏に、書かれない言葉が増えていく。


 エリオ・クレインは、最終報告書に目を通していた。


 数字は整っている。

 評価も高い。


 被験区域は、正式に「成功例」として登録された。


「……承認します」


 彼は、そう言って送信した。


 迷いは、あった。

 だが、理由は示せない。


 示せない以上、止める権限もない。


 リア・ノートは、その様子を見ていた。


「……これで、終わりですね」


 エリオは、頷いた。


「一区切り、だ」


 終わった。

 そう扱われる。


 神殿では、変わらず、何も起きていない。


 反応はゼロ。

 観測対象外。


 俺は、そこに在る。


 見ている。


 マルタが、道を選ぶのに時間がかかるようになったこと。

 選ばなかった道が、二度と戻らないこと。


 それらは、事故ではない。

 失敗とも、記録されない。


 だが、確定した変化だ。


 世界は、正しい。


 事故を減らし、危険を排除し、説明できるものだけを残した。


 その結果、

 誰も責任を取らずに、誰かが壊れる場所が生まれた。


 それでも、世界は進む。


 被験区域は拡張され、

 同じ手順が、別の場所でも使われる。


成功率:高

安全性:確認済み

推奨:継続


 その文字列が、次の計画を呼び出す。


 俺は、理解している。


 ここに、悪はない。

 誰も、間違っていない。


 だからこそ、止まらない。


 石の身体で、俺は問いを残す。


 ――これを、成功と呼ぶのか。


 答えは、世界の中にはない。


 だが、問いだけは、消えなかった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ