表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神に転生したが、石像から動けない ―管理社会における神性観測記録  作者: 鷹宮ロイド


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/34

第20話 旧式に触れる

 最初に違和感を覚えたのは、数値ではなかった。


 リア・ノートは、端末に表示された手順を見つめながら、指を止めていた。新手順は、簡潔で、無駄がなく、判断を挟む余地がない。


 それが、正しい。


 正しいはずなのに。


 視線を横にずらすと、古い資料が棚の奥に残っているのが見えた。廃棄対象ではないが、参照されることもほとんどない旧式の記録だ。


 リアは、周囲を見回した。


 誰もいない。

 監視カメラはあるが、規定外の行動をしても、数値が正常なら問題にならない。


 彼女は、静かに古い資料を引き出した。


 旧式の手順は、回りくどい。

 前提条件が多く、曖昧で、説明もしづらい。


 そして、その中心に、神性という言葉がある。


「……今さら」


 小さく呟く。


 神性反応はゼロ。

 測定もされていない。


 それでも、旧式はその存在を前提にしている。


 リアは、被験区域のログを見返した。マルタの数値は、今日も基準内だ。だが、微細な遅延が積み重なっている。


 このままでは、何も起きない。

 そして、何も止まらない。


 リアは、決めた。


 公式記録には残らない形で、旧式を試す。

 観測としてではなく、補正として。


 手順は、慎重に進められた。


 新手順を外すわけではない。

 その周囲に、旧式の要素を“重ねる”だけだ。


 祈りはない。

 儀式もない。


 ただ、かつて「意味がある」とされていた工程を、なぞる。


 実行後、リアは息を詰めて、数値を確認した。


 ――異常なし。


 それだけなら、いつも通りだ。


 だが、次の更新で、彼女は目を見開いた。


 マルタの行動遅延が、わずかに減っている。


 誤差範囲。

 説明不能。


 だが、戻っている。


 リアは、何度も確認した。


 ログは壊れていない。

 入力ミスもない。


「……なんで」


 答えは、どこにもない。


 リアは、すぐにこの結果を報告しなかった。

 報告すれば、再現性を問われる。


 再現できないものは、切り捨てられる。


 その夜、被験区域の巡回記録が更新された。


総合評価:問題なし

微細変動:誤差範囲


 いつもと同じ文面だ。


 だが、リアは知っている。


 旧式では、悪化しなかった。


 翌日、マルタは、少しだけ早く歩いていた。


 本人は、気づいていない。

 周囲も、気づかない。


 だが、リアには分かる。


 数値には出ないが、確かに変化がある。


 リアは、資料を閉じた。


 旧式は、完成していない。

 説明もできない。


 それでも。


 なぜか、壊れなかった。


 その理由を、誰も説明できないまま、

 世界は、新しい手順を「完成形」として進めていく。


 リアは、初めて思った。


 このまま進んではいけないのではなく、

 もう、戻れないのではないかと。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ