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よう、エディ。そう言って、ユリシーズと呼ばれた男はピンクベージュの髪をかき上げる。
その拍子に普段は隠れている左目――星空にほんの少しサファイアの粉末を溶かしたような色の瞳が垣間見えた。彼がこの瞳を見せることはめったにない。とくに、戦いの時は。
ユリシーズの衣装はこの場においてひときわ浮いていた。
着飾った貴族ばかり溢れる会場で、彼だけは動きやすさを優先した革製の衣装――戦闘服だったのだ。
そういう意味では気崩したエドゥアルトも大概ではあったのだが。
「おい、“エディ”はやめろ。なんか犬みたいだろ」
憤慨だといわんばかりに、エドゥアルトは顔をしかめる。
「何でだよ? 他の奴が呼んでんの俺サマ見たぜ? あんた笑ってたろ」
言われて、エドゥアルトは足を組むと、持て余した足をプラプラとさせた。
「そうだな。まぁそりゃ呼んでたやつは可愛かったからな」
「確かに俺サマは可愛いな」
嘘つけとエドゥアルトが抗議する。もちろん冗談だったので、ユリシーズも悪戯っぽく笑った。
ユリシーズは7つも年下なのだが、妙に馴れ馴れしいというか言葉遣いにも礼儀がない。
それでもどうしてか受け入れてしまえるのは、この男が持つ魅力なのだろう。
「俺は女にしか“エディ”って呼ばせねえんだよ。これはマイ青春白書にしっかりと書いてんだ、お分かり?」
「あんたのは第一項から閲覧禁止じゃねーか。世界の半分は女なんだから、もう半分にもよこせよ慈悲を」
憎まれ口の応酬がヒートアップしていく中、エドゥアルトはポケット――いったい何が入っているのか、やたらごちゃごちゃと音を立てている――から煙草を取り出すと、ほくち箱を取り出して火をつける。
「俺の半分は優しさでできてるが……。ユリシーズ、お前にはもう半分で接してやるよ」
「そりゃ何だよ、お役人さん」
火を灯した煙草を深々と味わい、ゆっくりと焦らすように紫煙を吐き出して――エドゥアルト振り返りざまに言った。
「仕事だ」
「そりゃ嬉しいねえ」
そう言ってユリシーズは隣の席にドカッと座り込んで長い脚を組む。
エディと同じポーズであるにもかかわらず、なぜかこの男の場合はサマになる。モデルの広告になりそうだ。190セルトマイスを超える長身もさることながら、素材が良い。
再び煙草をじっくり味わうと、エドゥアルトは呟く。
打って変わって真剣な顔。仕事の貌。
「収穫は?」
ユリシーズは待ってましたとばかりに笑んで、背中に隠していた羊皮紙の束を無造作にカウンターに放る。
「ご注文の品――アンドリュー・ボルガンディアの資産台帳だ」
【ゲストキャラクター】
ユリシーズ・アルジャーノン(Ulysses Algernon)
creator: タチバナナツメさん




