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The Tír na nÓg 〜ティル・ナ・ノーグ〜  作者: 佐藤つかさ
第二章 承
98/222

8-2

 そこは屋内でありながら、ジャングルがある熱帯の宮殿だった。

 水槽にはサメが我が物顔で泳いでいるし、イルカの飼育場があるし、トラの囲いもある。まさに桃源郷だった。

 

 そんな非現実な世界にいながら、エドゥアルトの反応は紙より薄い。

 さすがに動物にはしゃぐ歳でもないし、彼ぐらいの年頃になると()()()()()()()動物でないと心が躍らないのだ。――人間の女。

 

 かといってデートに来たわけでもないし、ましてや意中の女性がいるわけでもない。

 そんなわけで吸い殻山盛りの灰皿をわきに置いて、巨大なにわとりの腿肉にかぶりついていた。

 

 

 ――そんな生活してたら体壊しちゃいますよ? エディさん――

 

 

 不意に、ある人のことを思い出す。浮かぶのは、かつて曲芸師を目指していた少女の笑顔。

 人間の女だけど“そういう対象”とは違っていて、もっとこう、決して触れてはいけない宝箱のような―― 

 

 

「……なんで今思い出しちまうかね」

 

 

「思い出す回数が増えていくのは、歳を取った証拠だぜ」

 

 

 背後からの声に気づき、エドゥアルトはゆっくりと振り返る。

 トラが収められている檻のうしろから現れる長身の人影。その正体を、彼は知っていた。

 

 

「……ユリシーズか」


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