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ある男は、以下のように語っている。
いいか? 俺はあの時、吞んでたんだ。黄金林檎のワイン――もちろんティル・ナ・ノーグ産だ。四杯目、だったかな? いや二瓶空けてたっけかな? まぁ大した差じゃねえよな。で、知り合いと呑んでた。ちょいとした比較対象に関する議論を交わしてた。知ってるか? 人間ってのは酒はやめられても比較することは決してやめられないんだ。誰と誰、どっちが背が高い? 誰が一番カッコいい? 一番強いのは誰? ってな具合にな。あれ? 俺、一人だったっけ? ……話が逸れちまったな。まぁとにかくその時に俺は聞いたんだよ。
稲妻みてえな爆音をさ――
リリーシャの怒りが炸裂する少し前。
プルミエールの夜は最高潮に達していた。
何年かに一度開催される魔法使いの宴は、年を越すごとに豪華になり、大陸のどんな聖堂よりも天国に近づいている。そしてその献金皿には、どの聖堂よりもより多くの浄財が投げ込まれていた。
大量のマネーと共に集まってくる顧客は決して逃がさない。
事実、プルミエールの作りには、あの手この手で顧客を引き留めようとする計算が働いているのだ。
お祭り気分の松明は絶えることがなく、熱くもなく寒くもない温度に保たれている。
この誘惑的な箱庭の外側には骨折り仕事の現実が存在しているのだが、それを思い出させるものは徹底的に排除されていた。
お休みならこちらのスイートでどうぞ。酒も食事も完備しております。それが顧客への処方箋だ。
顧客を外へ出すなどもってのほかだ。そんなことをしたら商品を吟味してもらう時間が三時間か四時間も減ってしまうではないか。
そんなオーナーたちの企てに乗せられて、ある男はスイートで酒を嗜んでいた。
歳は三十代前半。
適当に伸ばした髪を後ろにくくり、ニコチンがしみ込んだ口をアルコールですすいでいる。
それなりに身なりのいい服装なのだが、適当に気崩されているせいか実際の価値よりも安く見える。
それでも男にだらしない印象はない。細いながらも研鑽を重ねている肉体であることが服の上からでもうかがえるからだろう。
物憂げに酒を飲む彼は、いったい何を思い耽っているのだろうか。
ふいに男が口を開いた。
「ビキニの姉ちゃんに会いてえ」
……思っているのは、わりかし俗っぽい内容だった。
「いや、ビキニを脱いだ姉ちゃんも悪くねえ」
訂正。かなり低俗な内容だった。
「どっちも悪くねえよな。比較できるもんじゃねぇ……」
この男――エドゥアルト・クレヴィングは退屈だと言わんばかりに頬杖をついて、大きなため息を吐き出した。
【ゲストキャラクター】
エドゥアルト・クレヴィング(Eduard Clewing)
creator: 美羽さん・タチバナナツメさん
登場作品:a piece of applecake(https://ncode.syosetu.com/n5213bd/)長月マコトさん著




