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ティル・ナ・ノーグが湾岸区域に建造された大都市である以上、水難は避けられない障害である。
排水目的の水路が人知れず、貴族エリアの地下で掘り進められていた。
着工されたのは五年前だが、税収不足と技術的な困難により施工は遅れに遅れて、いまだ予定区間のの三分の一も進んでいない。
建設推進派であった貴族と業者の癒着が発覚したのもまずかった。用水路や道路などのライフラインの拡張工事が優先されたので、余計には井須利は見向きもされなくなっていた。
それでも排水路には最新鋭の技術が注がれていたし、強度の高いコンクリートで作られた何本もの柱がで深い闇を支えていた。まるで古の神殿を守るように。
その柱がいともたやすく砕け散り、リリーシャは驚かずにはいられなかった。
「噓でしょ……」
槌の一振りでも容易に砕けないはずの柱が、まるで紙細工のように爆ぜ飛んでいく。
信じられない。ちょっとやそっとの爆薬で打ち砕けるものではないはずだ。
何より問題なのは、何があったのか全く見えていないのだ。
翼を生やした闇が、揺蕩う海藻のように揺れている。とても楽しそうに。リリーシャにはそれがこちらを嗤っているように見えた。
大気が震え、まるで風がくしゃみをしたような突風がリリーシャの銀髪を振り乱してくる。
衝撃音がして、リリーシャは柱の方を向いた。リリアーヌが衝撃をまともに喰らって、柱に叩きつけられたと気づいたのは少し後だった。
深い溝に埋もれた少女が、コンクリートの隙間から這い出てくる。口端からにじんだ血を袖で拭いながら、彼女は言った。
「厄介ですわね。フォノンメーザー砲だなんて」




