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甘かった。
息を吹き返している――否、そもそも死んでなどいなかった――レーツェルの歪な動きを目の当たりにして、リリーシャは臍を噛む。
レーツェルの魔法発動には条件がある。
まずは魔法を発動させるためのマナ。それをカードに蓄積させておき、起爆剤となる銃弾を撃ち込むことで魔法を繰り出す。ダイナマイトにマッチが必要であるのと同じように。
カードに蓄積させるマナは、レーツェルの体内にため込まれている大量のマナから供給する仕組みだ。
倉庫に貯めているダイナマイトを一束拝借するようなものと思えばいい。
銃弾はいわば、火をくべるための起爆剤だ。
それを直接――ダイナマイトを詰め込んだ倉庫に撃ち込んだとしたら――どうなると思う?
リリーシャは、自分の考えにぞっとする。
「自分の肉体を触媒にしたの!?」
血だまりの赤をたっぷり吸ったツインテールがずるりと揺れる。
赤茶けた血にまみれた顔に浮かぶのは、三日月のように割れる深紅の唇。
「リリーシャ。地獄を作るよ?」
呪うように祝福を授ける――意外なくらい澄んだ声。
レーツェルの周囲から生えてきたのは、何とも形容しがたい金属の集まりだった。その細部はひどくおぞましい。
剣のような、鉈のような、鋏のような、槍のような、釘のような、鏡のような。
体毛とも繊毛とも羽毛ともつかぬそれらは金属の光沢を放ちながら、ぎちちちち、と音を軋ませていて、それでいて臓物のような湿り気を帯びている。
どの生物とも似ていたが、どの生物とも似ていない。正直吐き気がした。
「随分と前衛的なアートじゃない。100年先なら流行りそうだから、さっさとそこににイっちゃえば?」
リリーシャが放った皮肉の返答は、無数の触手による一斉攻撃だった。
「ちょっと、冗談――」
リリーシャの声は、金属の打撃音によってかき消される。どうにか躱しているものの、そんなものは時間稼ぎでしかなかった。
けたけたと響き渡る気味の悪い笑い声は、レーツェルのもの。
「僕の魔法は、魔法であって魔法じゃない」
瞬きを一切しないレーツェルの瞳が、粘り気を帯びた光を放っていた……。




