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命が消える音がした。
力を失った――レーツェルだったもの――肉の塊が、脳漿をまき散らしながら地面に転がった。
「何だってのコイツ。わけわかんない」
リリーシャは短剣を腰の鞘に納めるが、警戒を解く気になれなかった。
謎はその名の通り、何を考えているかまるで読めない。
魔法をいつでも使える状態にして、考える。
レーツェル。
彼女の能力は、自分の魔術をカードに込めて繰り出す遠隔操作型の魔法だ。
魔法とは基本的に、大気中に存在するマナと呼ばれる元素を変質させて発動する。
だけど、当然ながらそのマナが薄い地域も場所にとっては存在し、そういう場所での魔法使いの活動は制限される。
だからレーツェルは体内に蓄積しているマナをカードに宿して、環境に関係なく魔法が使えるようにしているのだ。いわば触媒。
ピストルの弾丸は、魔法発動のための火付け石。ダイナマイトに火をつけるためのマッチのようなものだと思えばいい。
戦闘に配慮しているのではなく、自分のペースを乱されたくないからなのだと、別の町で聞いた時にはさすがに呆れかえったものだが。
そんなノリで戦っている人間が、自分の頭を撃ち抜くとは考え難い。こういうタイプは楽しみを削がれるのを嫌う。
そしてその疑念は正解だった。
転がる死体が――正確にはその指先がかすかに動く。
そして次の瞬間には、眼球がぎょろりと動いて狙いを定めた。
上半身を起こして、壊れた人形のようにぎこちない動きで小首をかしげて、にたりと笑う
真っ赤に濡れたその貌がリリーシャを見定め、魔法の呪文を唱えた。
「ライ麦畑の首無し死体」




