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The Tír na nÓg 〜ティル・ナ・ノーグ〜  作者: 佐藤つかさ
第二章 承
84/222

7-13

 ティル・ナ・ノーグで魔法は使えない。

 正確には()()()()()()()()()()が禁じられていて、使えば何らかのペナルティが課されるらしい。

 

 だから直接的な魔法は使うな――逆を返せば、間接的に人に干渉する魔法なら使っても一向にかまわない――と、リリアーヌから口うるさく言われていたのだ。

 

 それなのに、リリーシャは惜しみない殺意を向けて、人を傷つける魔法を使いまくっているし、それに対する“お咎め”も、今のところ来る様子はない。

 

「リリアーヌの嘘つきぃ」

 

 言葉に反して、その顔は愉悦ではちきれんばかりに歪んでいる。

 

 降りかかる死のギロチンを全て躱すと、レーツェルは地面ギリギリのところで風の魔法を使って落下を殺す。 

 

 ピストルから、まだ熱を帯びている空薬莢からやっきょう――鳩の羽を模したエングレーピングが刻まれている――を抜き取って、新しい弾丸を丁寧に詰めていく。

 

 彼女の視線の先には――リリーシャがいた。

 

「――あたしは人間よ」

 射殺すような視線を向けて、リリーシャは奥歯を噛んでいた。左の二の腕に巻かれている布を握り締めながら。

 それはとても大事な何かを隠している行為のようだったけれど、レーツェルにとっては脱いだ靴下と同じくらいどうでもよかった。

 

「あはっ。魔法の恩恵にあやかってるくせに人間気取ってんの? 100人にアンケートでも取ってみたわけ? 私は人間? それともハーフエルフ? ――えぇ、すごい! 70人以上があなたの事を人間だって言ってますよ! ――みたいなぁー?」

 

 言いながら、レーツェルは装填し終えたピストルで狙いを定めた。

 

 

 ――自分自身の頭へと。

 

 

 流石に予想外だったのか、リリーシャの表情が驚愕に歪む。

 逆にレーツェルの顔からは一切の感情が抜け落ちていた。 

 

 

「じゃあ死ねば?」

 

 

 いともたやすく引き金を引かれて、レーツェルの頭ははじけ飛んだ。  

 

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