7-13
ティル・ナ・ノーグで魔法は使えない。
正確には人を傷つける類の魔法が禁じられていて、使えば何らかのペナルティが課されるらしい。
だから直接的な魔法は使うな――逆を返せば、間接的に人に干渉する魔法なら使っても一向にかまわない――と、リリアーヌから口うるさく言われていたのだ。
それなのに、リリーシャは惜しみない殺意を向けて、人を傷つける魔法を使いまくっているし、それに対する“お咎め”も、今のところ来る様子はない。
「リリアーヌの嘘つきぃ」
言葉に反して、その顔は愉悦ではちきれんばかりに歪んでいる。
降りかかる死のギロチンを全て躱すと、レーツェルは地面ギリギリのところで風の魔法を使って落下を殺す。
ピストルから、まだ熱を帯びている空薬莢――鳩の羽を模したエングレーピングが刻まれている――を抜き取って、新しい弾丸を丁寧に詰めていく。
彼女の視線の先には――リリーシャがいた。
「――あたしは人間よ」
射殺すような視線を向けて、リリーシャは奥歯を噛んでいた。左の二の腕に巻かれている布を握り締めながら。
それはとても大事な何かを隠している行為のようだったけれど、レーツェルにとっては脱いだ靴下と同じくらいどうでもよかった。
「あはっ。魔法の恩恵にあやかってるくせに人間気取ってんの? 100人にアンケートでも取ってみたわけ? 私は人間? それともハーフエルフ? ――えぇ、すごい! 70人以上があなたの事を人間だって言ってますよ! ――みたいなぁー?」
言いながら、レーツェルは装填し終えたピストルで狙いを定めた。
――自分自身の頭へと。
流石に予想外だったのか、リリーシャの表情が驚愕に歪む。
逆にレーツェルの顔からは一切の感情が抜け落ちていた。
「じゃあ死ねば?」
いともたやすく引き金を引かれて、レーツェルの頭ははじけ飛んだ。




