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The Tír na nÓg 〜ティル・ナ・ノーグ〜  作者: 佐藤つかさ
第二章 承
81/222

7-10

 天使と悪魔のダンスは熾烈しれつなものだった。

 

 青い槍と緑の剣が繰り出す執拗しつような攻撃を、リリーシャはかろうじてかわしていき、躱しきれなかった分は短剣でさばいていく。

 

「しつっこい!」

 

 リリーシャが練り上げた魔法の風が、辺り一帯を吹き荒れる。

 窓があれば割れてしまいそうなほどの突風に、天使と悪魔は人の形を保ち切れずかき消えた。

 

 残り香のようにただよう青と緑の火の粉が、リリーシャの美貌びぼうを照らす。

  

 その様子を見てレーツェルは嬉しそうにつぶやいた。吊り上がった丸い目をしばたたかせながら。

 

 

「その目――まるで犬みたい。獲物をかみ殺すケダモノの目だ」

 

 

 何が犬だ。

 リリーシャに言わせれば、自分が犬ならレーツェルは猫だ。

 猫は獲物をもてあそぶ。とても残酷に。

 

 

「怖いから逃ぃーげよ、っと」

 

 レーツェルも魔法を使って、足元に氷の柱を作り上げる。それはレーツェルを高く高く持ち上げて、リリーシャが決して届かぬ距離まで延びていった。

 

 しかし忘れるなかれ。

 リリーシャもまた、不可能を可能にする魔法使いなのだ。

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