表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
The Tír na nÓg 〜ティル・ナ・ノーグ〜  作者: 佐藤つかさ
第二章 承
80/222

7-9

 アイリスが串刺しにされる少し前にさかのぼる――

 

 

「りぃーりぃーしゃーぁ? あぁーそぉ-ぼぉー?」

 

 

 無邪気と狂気をかき混ぜたような声。

 

 レーツェルという名の少女は、左手の指に挟んでいたカードをリリーシャ目がけて投げつける。

 カードは金と黒のシックな組み合わせで彩られており、反対側には妖精や邪妖精の絵が刻まれている。占いに使うオラクルカードと呼ばれているものだ。

 

 それが地面に突き刺さると、粘液がゆだる音とガラスが砕け散る音が不協和音ふきょうわおんとなって響き渡る。それだけで、このカードが一般のものと異なるのは明白だった。

 

 

ボクがルール決めるよ? ヒーローは僕で、リリーシャが悪役ね?」 

 子供みたいに話を勝手に推し進めながら、くるりくるりと得意げに指先で回すのは――愛用のピストルだ。

 六連弾倉式のリボルヴァー。バレルを切り詰めて、グリップに豪奢な彫刻エングレーピングを施した競技用拳銃。

 

 実戦用では決してない――娯楽アソビのために作られた道具。

 


 呪文の言葉と共に、ピストルの狙いを定めて――引き金を絞る。


 

  

天使の祝福エンジェルファイア

 

 

 

 指先にたった数ジェムの重みを加えるだけで、撃鉄は下ろされ、弾倉に詰め込まれた雷管らいかんの尻を叩く。

 弾丸がバレルリングの螺旋らせんをなぞりながら突き進み、銃口から火花を噴いて飛び出した!

 

 

 弾丸はまっすぐに床に散らばったカードのうち一枚を撃ち抜いた。

 

 

 金属の牙に食い荒らされたカードは、若葉の色をまとった炎に焼かれて燃え広がる。

 それはやがて人の形となり、頭に輪っかを携え長剣を構えた戦士と成る。

 さらにレーツェルは銃の狙いを変えた。狙いは新たなカード。

 そして呪文が唇より紡がれる。

 

 

 

闇に潜む影ダークシャドウ

 

 

 

 再びカードを撃ち抜くと、今度は青い炎が包み込み、そそり立つツノを頭から生やし、三又槍トライデントを手にした人の形へと姿を変える。

 

 

 レーツェルの左右を守る緑と青――天使と悪魔がはっきりと相手を見定めた。

 ――リリーシャを。

  

「…………」

 睨まれたリリーシャは、短剣を構えて臨戦態勢となる。

 

 

「ねえ、知ってる?」

 首をかしげて、まるで知ってる知識を披露したがる幼子のようにレーツェルは呟く。

 

 

「炎と影は仲良しなんだよ?」

 

 

 まるで罪と罰みたいにさ、そう言ってレーツェルは笑った。   

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ