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意外なことに、痛みはまるでなかった。
体が自分のものではないようで、手足が上手く動かせなかった。
背中から胸にかけて“何か”が、アイリスの体を貫通していると認識できたのはしばらく後だった。
かろうじて視界でとらえられるのは 胸から生えた“何か”だけ。それは金属のようで、歪で、ぐちゃぐちゃで、滑っていた。
地面から伸びているそれは、まるで竹のようにさらに高さを増し、それに比例してアイリスの肉が上に引っ張られるにもかかわらず、まるでゴムのように感覚がない。痛みがない。それは死の感覚。
つま先が宙に浮いて細い体が持ち上がった。まるで案山子みたいに。
地面に零れていく血だまりを踏みつけて、リリアーヌが無感情に見上げていた。
「敗因をお話ししたでしょう?」
特に感慨のない声で、死神は言った。
「この戦いは一対一じゃない。――二対二ですわ」




