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「わたくしの“黒い茨”は、空間に亜空間を挿入する魔法ですの」
咲き誇る薔薇の花をほっそりとした指先で軽くなでながら、リリアーヌは睫毛を伏せる。
「何もない用水路を自分のバトルフィールドに変えられるってわけね」
「ラフに言い換えると、そうなりますわね」
ため息をつくリリアーヌ。
次の瞬間、広大な花畑からおびただしい量の武器が現れたではないか!
剣、槌、槍――まるで世界中の武器がここにかき集められたかのように、そこかしこに突き刺さっていた。目の前に、あるいは視界の果てに。
まるで降り注がれた後の矢のような、あるいは墓標のような。
あたり一面から鉄の臭いと花の香りが漂い、死臭をまき散らしている。
無造作に一本の剣をつかみ取るリリアーヌ。まるで自身の腕の延長線上であるかのように手慣れた動きで剣を振るい、胸の前で縦一文字に剣をぴんと伸ばす。それは騎士の構えだった。
「天馬騎士団の剣技――わたくしも学ばせていただきます」
射貫くようなリリアーヌの眼差し。そして神速の踏み込みでアイリスに迫る。
まるで蛇が獲物を食らうかのような――静止からの最高速!
(迅い!)
剣の切っ先が唸り、大気を切り裂く。
短剣の腹でかろうじてアイリスは一撃必殺の斬撃を受け止めるが、ナイフと剣では分が悪かった。
「遅いですわ」
歌うような声が響く。
舞踊にも似たステップを刻んでリリアーヌの体がふわりと浮かぶ。アイリスが顔をあげた先にあったのは、絶対の死をまとって必殺の剣劇を繰り出してくる死神の姿だった。
アイリスはかろうじて受け流し、カウンター気味になけなしの短剣を投擲したが、リリアーヌに苦も無く弾かれる。
アイリスは近くにあった剣をつかむと、力いっぱいに引っこ抜いて迎え撃つ。
ぶつかり合う裂帛の気合。先に砕け散ったのはリリアーヌの剣だった。
だが武器のストックは文字通り無限にある。リリアーヌは手近にあった二本のショートソードを掬い上げると、実に手慣れた動きでくるりと回してみせる。
ショートソードは刃が短い分、取り回しが軽く振り回しやすい。
身の軽いリリアーヌとの相性は恐るべきものがあった。
咲き誇る薔薇の庭園で、二人の戦士が向かい合う。
「頭を垂れなさい。菫の花!」
「へえ、土下座でもしてくれるの? 百合の花!」




