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騎士の剣と死神の刃。
人知を超えた速度で大気を割り、叩き合い、火花をまき散らす。
まるでフェンシングのごとく、必殺の一撃を叩きこむ一瞬を互いに探りながら、剣先同士で打ち合っている。
軽さで優るリリアーヌの剣が、鈍色の突風となってアイリスに襲い掛かった。
だが、
気合一閃! アイリスが振り下ろした一撃が、リリアーヌのショートソードを粉砕する!
リリアーヌは使い物にならなくなった剣を二本とも投げ捨て、一瞬だけ思案する。
(アイリスの方が剣技に分がある。騎士としての経験――いえ、費やしてきた情熱の差ですわね)
だが手にした武器が砕ければ、また別の武器を拾えばいい。それも砕ければまた次。その次も――
そうしてアイリスとリリアーヌの演武は続き、花畑に転がっているのが突き刺さった剣よりも、砕けたそれの方が勝り始めた頃、勝負の流れが変わりつつあった。
(あの人との“契約”もありますし、ここはしかけてみましょう)
「終わらせますわ」
大気を割るリリアーヌの斬撃は、明らかにこれまでのものとは異なっていた。
四方八方、全方位から降り注ぐ白銀の暴風雨。
流麗で無駄のない、それでいて重たい剣がアイリスめがけて降りかかる!
「何、よ。……これっ!」
さしものアイリスも驚愕に対処が遅れてしまう。受けきれない分はかろうじて躱すも、リリアーヌの剣はさらにスピードを上げて、アイリスを容赦なく削り取っていく。
「アイリス・リベルテ。貴女の敗因はその視野の狭さです。この戦いは一対一ではありません」
金属の突風が吹き荒れる中でリリアーヌが囁いてくる。
それがアイリスの神経を逆なでした。
「……っ! 負け惜しみは見苦しいんじゃないっ!」
跳ね上げた剣先がリリアーヌの剣をとらえた。いかに早いといえど、リリアーヌの剣はたった一本。それさえ止めれば嵐は止む。
主の手を離れた剣はひゅんひゅんと回って宙を舞い、花畑に刺さって動かなくなった。
それはアイリスの絶対勝利だった。
はずだった。




