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The Tír na nÓg 〜ティル・ナ・ノーグ〜  作者: 佐藤つかさ
第二章 承
74/222

7-3

 ダンスの始まりは、鎌の刃と短剣のそれとの接吻べーぜだった。

 

 アイリスの刺突を、リリアーヌは鎌の反対側――柄尻つかじりで受け流し、すかさず斬撃のカウンターを振るう。

 それをアイリスは肉食動物のような前傾姿勢でかわすと、転がって仰向けに体勢を変えて、足を鞭のようにしならせる。ブレイクダンスに近い動きだった。

 跳ね上げた蹴りがリリアーヌの手から鎌を叩き落とす。

 

「……っ! 天馬騎士団はもっと型にはまっていると思っていましたが……」

 

「妹は自由な発想の持ち主なの」

 

「それは良い妹さんをお持ちで。――ですが!」

 

 リリアーヌは虚空に両の手を伸ばすと、手のひらに吸い込まれたバラの花びらを握り締める。

 次の瞬間には、リリアーヌは両手に鎌を二本携えていた。

 

「嘘っ!」

 

「わたくしは魔法使い。人間の物理法則にとらわれた考えはお捨てなさい!」

 

 リリアーヌが鎌を二本放ると、それらはすさまじい回転を始め、大地をえぐり取る車輪のごとく疾走しながら、アイリスめがけて食らい掛かる!

  

「それならっ!」

 

 アイリスは抵抗を辞める。迫る死を前にしながら、横にも後ろにも退かない。

 それは傍から見れば彼女が結末を覚悟したように見えただろう。

 だがまだ運命を受け入れるには――アイリス・リベルテはあまりにも若すぎた。


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