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The Tír na nÓg 〜ティル・ナ・ノーグ〜  作者: 佐藤つかさ
第二章 承
73/222

7-2

「お初にお目にかかります。天馬騎士団」

 

 飴玉を転がしたような甘い声にそぐわぬ丁寧な物言いに、アイリスは顔をあげていた。

 レーツェルと名乗った護衛とはまた別の人物。すでにマントを脱ぎ棄てていたので、その姿をしっかりと見てとることができた。

 

 ミルクティー色の長い髪。それ以外の色素をすべて忘れてきたような肌。

 大きな深紅の花を彩った髪飾りに、衣服のところどころをリボンで飾っていたけれど、彼女自身は人間味の感じられない無機質な――まるで精巧な人形を見ているような気分にさせられる。

 おそらく十に達したばかりであろう年端もいかない少女で、未発達な体の線は細く見える。

 

 少女の表情は――まるで氷河のように冷たいものだった。

 

 

 

「わたくしの名前はリリアーヌ。親しき方からは“死神”と呼ばれています」

 

 リリアーヌと名乗った少女は、芝居がかった仕草で腕を高々と掲げる。

 いつの間にか天からひらりはらりと舞い降りていた一枚のバラの花びらが――まるで吸い込まれるかのようにリリアーヌが広げたてのひらに収まった。

 

 握りしめると、拳の隙間から光が零れ出て、いつの間にかリリアーヌの手には一本の巨大な鎌が握られていた。

 身の丈ほどあるそれを、まるでペンを振るうように簡単に操ってみせる。柄には「Qliphothクリフォト」のスペルが刻印されているのが見えた。

 踊るようなその足の運びステップも、指先まで神経を張り詰めたその動きはまるで演武えんぶのように流麗で、まるで儀式を見ているかのようであった。

 

 

 それは魂を枯らす輪舞ロンド

 

 

「…………」

 アイリスは訪れる死を迎え撃つために身構える。

 

 

 鎌の刃をアイリスに突きつけて、死神は静かに宣告した。

 

 

椿つばきのように朽ちなさい」

 

 

 無機質な顔でありながら、言葉を紡ぐ唇は艶やかであった。

【ゲストキャラクター】

リリアーヌ(Liliane)

creator: ひかりごけさん

登場作品:僕らの誓い(https://ncode.syosetu.com/n5747s/)

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