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「何をしている! もう“仕掛け”を使う手筈だろう!」
アンドリューが男を叱咤している。この時点で主犯格がどちらかは明白だった。
どういうことなの?
アイリスは茫然として動けなくなっていた。
まるでゴールめがけて駆けていた橋が、途中から無くなっていたかのように。
「いやいや、これは予想外の展開だね。……まぁ予想内ではあったけど」
アクチェが他人事のように呟いている。
「もう終わりだ。逃げよう」
潔く背中を向けるアクチェの姿に、リリーシャが声を投げかける。その目には軽蔑の色がにじんでいる。
「はぁ? ちょっとヒツジ頭。今なんて?」
「逃げようと言ったんだ。残念ながらアンドリューの道徳は正しい方向に向いていない事が立証された。世界最高の魔法使いである彼にとって、このティル・ナ・ノーグは貯金箱だ。富も権力もあり、腕利きの護衛もいる。――対して僕らの戦力は? 謹慎中の天馬騎士団一名と傭兵、それに虚弱体質の民間人だ」
「やってみないとわからない」
「なら試してみよう」
「へえ、やる気になったの?」
「いや、護衛に気づかれた」
は? と、リリーシャは素っ頓狂な声をあげてアンドリューの方を振り返った。
見てみれば、マントを着た護衛が何やら魔法を唱えている。標的は――アイリスだ。
「それを早く言ええええええ!」




