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The Tír na nÓg 〜ティル・ナ・ノーグ〜  作者: 佐藤つかさ
第二章 承
63/222

6-11

 相も変わらずプルミエールは盛況で、人々でにぎわっていた。

 新しい魔法テクノロジーの深淵を覗きたい探究者。最先端のファッションを知りたくてたまらない貴族。最高のビジネスをかぎ分ける経営者。この箱庭には数多の欲望が詰まっている。

 

 だがそこに、全く異なる目的を持った若者エキストラがいた。

 アイリスとアクチェ。そしてリリーシャである。

 

 

 彼女たちが探しているのは目標ターゲット――アンドリュー・ボルガンディアだ。

 

 

「これはいい。テティリシアの虹だ」

 アクチェが店舗の前で驚きの声をあげていた。

 飾られているのはマジックアイテム。七つの宝石をちりばめた懐中時計だった。

 

「テティリシア? 何それ?」 

 疑問の声をあげたのはリリーシャだ。彼女はティル・ナ・ノーグの歴史を知らない。

 

「語り継がれてる御伽噺ジュブナイル。海の妖精リールの怒りを買った王国が滅んだの」

 

「いいや、違う。間違ってるよアイリス。実際は王国ではなく街だ。そして怒りを買ったんじゃあない。人間が妖精に喧嘩を売ったんだ。テティリシアという少女を傷つけてね」

 

「まるで見てきたみたい」

 

 妖精の友達がいるんだ。そう言って、アクチェは肩をすくめた。

 それから店主と交渉して、金貨を机に四枚ほど並べてみせた。一枚あれば五人家族が一か月暮らせる価値のある金貨を、だ。

 

 アクチェは買い取った商品を確かめ、油紙に包むとポケットにそっとしまいこんだ。

  

「私たち買い物に来たの? そうなの知らなかった」

 抗議する口調でアイリスが問うた。

 

「何か買わないと怪しまれるだろう?」

 アクチェはアイリスの敵意を受け流し、軽く手を振って見せる。

 

「それに――アンドリューなら、彼女が見つけてくれるはずだ」

 

 アクチェは揃えた指先をリリーシャに向ける。まるでゲストを手招きするホストのように。

 

 リリーシャが見つけるとはどういう事だろう。

 呼ばれたリリーシャには心当たりがあるらしく、困ったようにため息をついて、そして答えた。

 

「フーリエ変換って知ってる?」 

 

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