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相も変わらずプルミエールは盛況で、人々でにぎわっていた。
新しい魔法テクノロジーの深淵を覗きたい探究者。最先端のファッションを知りたくてたまらない貴族。最高のビジネスをかぎ分ける経営者。この箱庭には数多の欲望が詰まっている。
だがそこに、全く異なる目的を持った若者がいた。
アイリスとアクチェ。そしてリリーシャである。
彼女たちが探しているのは目標――アンドリュー・ボルガンディアだ。
「これはいい。テティリシアの虹だ」
アクチェが店舗の前で驚きの声をあげていた。
飾られているのはマジックアイテム。七つの宝石をちりばめた懐中時計だった。
「テティリシア? 何それ?」
疑問の声をあげたのはリリーシャだ。彼女はティル・ナ・ノーグの歴史を知らない。
「語り継がれてる御伽噺。海の妖精リールの怒りを買った王国が滅んだの」
「いいや、違う。間違ってるよアイリス。実際は王国ではなく街だ。そして怒りを買ったんじゃあない。人間が妖精に喧嘩を売ったんだ。テティリシアという少女を傷つけてね」
「まるで見てきたみたい」
妖精の友達がいるんだ。そう言って、アクチェは肩をすくめた。
それから店主と交渉して、金貨を机に四枚ほど並べてみせた。一枚あれば五人家族が一か月暮らせる価値のある金貨を、だ。
アクチェは買い取った商品を確かめ、油紙に包むとポケットにそっとしまいこんだ。
「私たち買い物に来たの? そうなの知らなかった」
抗議する口調でアイリスが問うた。
「何か買わないと怪しまれるだろう?」
アクチェはアイリスの敵意を受け流し、軽く手を振って見せる。
「それに――アンドリューなら、彼女が見つけてくれるはずだ」
アクチェは揃えた指先をリリーシャに向ける。まるでゲストを手招きするホストのように。
リリーシャが見つけるとはどういう事だろう。
呼ばれたリリーシャには心当たりがあるらしく、困ったようにため息をついて、そして答えた。
「フーリエ変換って知ってる?」




