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The Tír na nÓg 〜ティル・ナ・ノーグ〜  作者: 佐藤つかさ
第二章 承
62/222

6-10

 第一印象はか弱い少女だった。

 長い睫毛。薄い唇。肩まで届いた白銀のセミロング。

 触れれば折れそうな手足は、まるで繊細なガラス細工のように華奢だった。

 

 

「天馬騎士団にしては弱っちそうね」

 

 

 第二印象は――びっくりした。

 声は甘いが言葉は苦い。

 矮躯わいくな見た目にそぐわぬ魂の持ち主らしい。

 

 胸元で結んだ深紅のリボンを揺らしながら、少女はアイリスに歩み寄る。

 朝焼けの空を溶かしたような色をした双眸ひとみが、まっすぐにアイリスを見つめていた。


「…………」

  

 どうしてだろう。彼女を見ていると、まるで自分の過去を見ているような気分になる。

 

 少し、落ち着かない。

 

 

「落ち着かない?」

 

 見透かしたような少女の声に、アイリスの心臓が跳ね上がる。

 

 

「どうして?」

「イラついてるんでしょ?」

 

 

「声おかしかった?」

「ジメチルトリスルフィドとアリルメルカプタン。心理的ストレスを感じたときに出てくる化学物質。それが体臭として、あたしの鼻に届いたの」

 

 

 ほんのちょっぴりだけどね、と少女は付け加える。

 

 

「すごい嗅覚」

「目も耳もいいよ。ついでに言うと魔法使い」

「履歴書には書いてなかった」

 

 

 ジョークで返すと、少女は意外にも好意的に微笑んでくれた。

 

 

「メルスタリオンを代表して、あんたに協力してあげる」

 

 

 ぶっきらぼうな口調だが、その声色は柔らかい。

 

 

 そして彼女はアイリスに手を差し伸べる。

 

 

 どうやらそれは彼女なりの親愛の証らしい。

 

 

 ならそれに応えなくっちゃ。

 

 

「初めまして、アイリスよ」

 彼女の手に触れ、名前を明かす。

 苗字は騎士団の父を隠すため、念のため伏せておく。

 

 

 少女もならい、アイリスの手を握り返してくれた。

 

 

「リリーシャよ。よろしく」

 

 

 想像よりも、優しい握り方だった。

【ゲストキャラクター】

リリーシャ(Lilycia)

creator: ひかりごけさん

登場作品:僕らの誓い(https://ncode.syosetu.com/n5747s/)

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