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The Tír na nÓg 〜ティル・ナ・ノーグ〜  作者: 佐藤つかさ
第二章 承
60/222

6-8

 サキュバス。

 ある植物に寄生された新人類。

 運動能力が高く、数百人程度しか確認されていない希少種だ。

 

 大きな特徴は、頭に花を咲かせていること。

 それがサキュバスの特徴アイコンだ。ゴブリンの鼻が高いように。

 

 幸い、今日のアイリスは側頭部に花の飾りを身に着けていた。パーティー用の変装アイテムの一つだ。

 サキュバスと違って脳神経が繋がっているわけではないが、見た目なら難なく騙せるだろう。

 

「君は正気かい?」

 

 アクチェが耳打ちしてくる。

「本気」ではなく「正気」と聞いてくるあたり、アイリスに抱いている不安の度数が如何ほどかわかるというものだ。

 

「ほかに方法がないのよ。人間だってばれたら多分、身ぐるみはがされて、脳みそとか食べられちゃって、骨で楽器とか作られちゃう」

「エルフを蛮族扱いするのはいかがなものかと思うけど……」

 

 アイリスの体がビクンと跳ねる。エルフに肩を叩かれたのだ。

 

「サキュバス……ってぇことはあんた、キルシュブリューテの生まれか」

 

 エルフに問われて、アイリスは首がもげてしましそうなくらいぶんぶんと縦に振った。

 

 それからの空白の無言。今までの中で一番恐ろしい静寂だった。

 脳に血がたまる、視界が端から赤くなっていく。ストレスで倒れてしまいそうだった。

 

 エルフの答えは――満面の笑顔だった。

 

「俺もキルシュブリューテ生まれなんだ!」

 

 単純でよかった。

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