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The Tír na nÓg 〜ティル・ナ・ノーグ〜  作者: 佐藤つかさ
序章
6/222

1-6

『これは夢か現実か。迷い込んだ幻想世界。人間の王女と神秘の森の妖精王。巻き起こるは一夜の恋の大騒動。どうぞあなたも夢のような一時を――』

 時計が歌っている。

 内容は理解できる。今日公演されている舞台。リベルテも見に行ったから知っている。役者の演技も、盛り上げるコーラスも、観客の拍手もみんな覚えている。

 理解できないのは、それがなぜ独房で聞こえるのかということだ。しかも時計から。

 

 タネはノア自身の手で語られた。

「中にクリコムを仕込んである。もう一つは劇場に。役者の衣装に縫い込ませてある。私芝居は初日と千秋楽は見逃さない主義なんだ」

 

 問題なのは、ノアは時計に触れていないという点だ。どうやって起動させた?

 触れているといえば、手に握られているスイッチくらい。まさか――

「クリコムと理屈は同じだ。電波に乗せて信号を送り、遠隔操作する」

 スイッチを掲げて不適に微笑む。

 

「未来の技術だよ」

 

 リベルテは思わず拳を握りしめた。つまり爆弾は遠隔操作でいつでも爆破できるというわけだ。予想以上に不利な状況だ。

「爆弾の起爆スイッチは貴方が持ってるってこと?」

「そうだ」

「スイッチは今手に持っているそれ?」

「いいや。別だよ。だがどこかに隠してある」

 

 良い解釈をすれば、起爆スイッチさえ探せば爆弾は止められるということだ。

 悪い解釈をすれば、爆弾を目覚めさせるのはノアの気分次第ということだ。

 

 だから何としてもノアから起爆スイッチを奪わなくてはならない。

 リベルテは遮光眼鏡の奥から視線を巡らせる。

 ベッドの下に何か隠れてる様子はない。

 左側には机と時計。横には難しい書物が数冊。

 反対側には桶と蓋。多分簡易トイレだ。……まさかあそこじゃないよね?

 

 チクタクと時計の針が聞こえてくる。まるで爆発のカウントダウンが迫っているかのように。

 その時、遠くから野太い声が飛び込んできた。

「火事だ! 火事だぞ!」


冒頭の芝居のセリフ


契約と代償と猫と精霊

http://ncode.syosetu.com/n0764be/


Creator:猫乃鈴さん

https://mypage.syosetu.com/73445/

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