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問題は3つある。
ひとつ、爆弾がある。
もうひとつ、どこにあるのか分からない。
最後に、それはいつ爆発してもおかしくない。
3万人の民がそろって天国に入学するのも時間の問題だ。それだけは絶対に阻止しなくてはならない。
「…………」
リベルテは汗をにじませる。
仕込みはいつ動き出すだろうか、と。
「ペンダント」
不意にノアが話しかけてきた。指で胸元とリベルテを交互に指しながら続ける。
「ペンダントはかけているのか? 天馬騎士団の証を」
「…………」
リベルテは無言のまま、胸元からペンダント引っ張り出す。
鎖の先にぶら下がっているのは、銀を削り出した装飾品。自らの尾を喰らう蛇の輪。上に王冠。左右に翼。輪の中心にはペガサスの衣装が彫られた盾が飾られている。
騎士の証として、ティルナノーグ領主から賜る逸品だ。
その証を、リベルテは相手の前に掲げてみせた。
「素晴らしい。天馬騎士団の騎士になれるのは二十歳前後。わずか十四歳で騎士になれた君は才智溢れる若者なのだろうね」
実に満足げにノアはうなずく。そして言った。
「クリコムは持っているか?」
リベルテは、もう一つ首に提げていたネックレスも胸元から引っ張り出した。
鎖にくっついているのは銀ではなく水晶。空のような色を放つ宝石は、光の当て方で若葉の色に似た煌めきを見せてくれる。
クリコム。正確にはクリスタル通信機。
水晶の共振作用により、お互い遠い場所にいても会話ができる魔導具である。
「通信は切ってるのかい?」
「もちろん」
格好に似つかわしくない可愛らしい声でリベルテは答える。
「便利な時代になった。そう考えるようになったのは、歳を取ったからかな」
痩せ細った肩をすくめてノアは苦笑してみせた。
「人の声を電気信号に変えて空中に飛ばす。相手のクリコムに届けば、電気信号は再び声に戻されてメッセージが届くんだ」
そういうことだ。例えば、はるか離れた彼方に別のクリコムを持った人物がいるとしよう。リベルテが話しかければ、その人物に届くというわけだ。もちろん逆も然りである。
不意に、ノアに隣を見たまえと促される。
リベルテが視線を向けると、そこには机があった。置かれているのは、囚人部屋には似つかわしくない豪華な時計。
「こう見えて私は模範囚でね。ある程度の便宜が図られているんだ」
時計といえば貴族だけが持てる高級品だ。それをどうしてノアは持っている?
「良いものを見せよう」
剣のグリップに似たようなものをノアは握っていた。似たようなものと表現したのは、グリップしかなかったからだ。ついているのは刃ではなく、小さなスイッチ。
そのスイッチを親指で押してみせる。
すると、信じられないことが起こった。
時計が、歌い出したのだ。




