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カーソンさんに、会ってみたかった。
そんなことを思うのは、時間が有り余っているからだろう。
アイリスが今いるのは、プルミエールの端にある建物だった。
温かみのあるヒノキの床に、冷たいレンガの壁。
和洋折衷の空間に、碁盤のごとく無駄なくきっちりと並べられたマネキンが、たいまつの光に触れてほのかに輝いて見えた。
ここに飾られている衣装は、次世代の魔法使いのローブである。高品質の魔法素材をふんだんに使ったもの。冒険で運用できる動きやすい軽量化素材を利用したもの。式典用の豪華なもの。デザイン優先のものまで千差万別だ。
もしも実際の人間だったら、成人男性の平均体重は確か67キルトジェムだったかな、等とくだらないことを考えるようになってきているのは、退屈してきた証だろう。
アイリスは武骨な天井を眺めながら、物思いにふけっていた。
カーソン・ヴァルフレアは、天馬騎士団第十師団師団長の名だ。
斧を振るい、オーガすら屠る勇敢な騎士。
どんな荒くれ者も彼の前にはひれ伏すしかない。
カーソンはアイリスの父の部下だった人だ。
アイリスが幼いころに父は亡くなった。アイリスの知らない父を、きっとカーソンは知っている。
父はどんな人だったのだろう? かっこよかったのかな? みんなから立派だって言ってもらえていたのかな?
話が出来ればよかったのだけど、第十師団は遠征が多いために出会える機会がなかったのだ。
出世したいと願うのは、父に追いつきたいという想いからか。
いや。たぶんきっと――
今待っているのは、アクチェが呼んだ増援。
金で雇った傭兵だそうだ。それも“元”第十師団の騎士たち。
ひょっとしたら父の話を聞けるかもしれない。父は昔、第十師団の師団長だったのだ。
人影が見えてきて、アイリスは手を振ってそれに答える。
どうやら当たりだったらしい。人影も手を振って、アイリスに近づいてくれた。
ここで違和感に気付く。
アイリスの身長は162セルトマイス。女子としては平均的な身長だ。
自身の目の高さと距離から、相手の身長がある程度予測できるのだが――
何度計算しても290セルトマイスは軽く超えているのだ。
何せマネキンの山から胴が見えるくらい抜きんでている。
そして、実際に超えていた。




