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The Tír na nÓg 〜ティル・ナ・ノーグ〜  作者: 佐藤つかさ
第二章 承
52/222

5-15

 石畳を踏み鳴らす音が止む。

 アクチェが白線の前で立ち止まったので、アイリスもそれにならった。

 ここは――プルミエールの中心地。



 風にあおられて、アクチェの髪がふわりと揺れる。

 純白の髪。白。白は無の色。

 無。虚無。

 それは空。

 大妖精ニーヴが司る空。

 

「気を付けるんだ。アイリス・リベルテ」

 アクチェがさえずる。まるでセイレーンのように。

 

「人間は、妖精が授けた魔法によって完成した。だとすれば、これから出会うのはその頂点だよ」

 

 ここは――プルミエールの中心地。

 広大な土地と資材を贅沢に費やした屋敷。所々に塗られた朱は、塗料を使える余裕と財がある証。

 その富の上で胡坐あぐらをかいているのは、世界最高の魔法使い――アンドリュー・ボルガンディア。

 容疑者にも加害者にもなりえる男。

 闇に飛び込む覚悟があるか? アイリスにはある。

 

 ドレスの白が影で濡れた。



「未来を見に行こう」

 

 

 アイリスは歩を進め――白線を踏み越えた。

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