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The Tír na nÓg 〜ティル・ナ・ノーグ〜  作者: 佐藤つかさ
第二章 承
51/222

5-14

 妖精の肉体は、人間の体のまがい物。

 アクチェ・ヴァルカがかかげた“寝言”は、そんな突拍子もないものだった。

 

「妖精はヒトとかかわることでヒトを理解し、ヒトの肉体を模倣した。精霊から一段階上のステップに立てた見返りに――魔法という贈り物を授けてくれたんだ」

「神が人を模倣したなんて考えているの?」

「妖精は万物の賢者だよ? 賢い行為とは、ありとあらゆる無駄を省いた効率化にある」

 

 アクチェは指で空をかき回してみせる。まるで大妖精ニーヴをからかうように。

 

「何万年もかけて形にした人類の進化。妖精はその“結果”だけを盗み取った。いいかいアイリス? この世で最も効率的な行為とは盗むことだ。この世で最も賢いのが妖精だというのなら、それをしないわけがない」

「……そんなのフェアじゃない」

「神の行為を人間の尺度で考えるものじゃないよ。……まぁ、僕が()()()()()()()()()()仮説だから鵜呑みにされても困るけどね」

 

 アイリスは複雑な気持ちになる。アクチェの物言いは傲慢ごうまんだが、あながち間違ってもいない。だが面白いという理由であれば仮説とは言えない。それは娯楽だ。

 

「私は信じないから」

「いかにも人間らしいね」

 かすかに笑みを――ひどく疲れたような――浮かべて、アクチェはさらにこう言った。

 

 

「みんな信じたいものしか信じない」

 

 

 その声は達観しているような、あるいは諦めているような――あるいは実体験のような――そんな圧し掛かるような響きがあった。 

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