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妖精の肉体は、人間の体の紛い物。
アクチェ・ヴァルカが掲げた“寝言”は、そんな突拍子もないものだった。
「妖精はヒトとかかわることでヒトを理解し、ヒトの肉体を模倣した。精霊から一段階上のステップに立てた見返りに――魔法という贈り物を授けてくれたんだ」
「神が人を模倣したなんて考えているの?」
「妖精は万物の賢者だよ? 賢い行為とは、ありとあらゆる無駄を省いた効率化にある」
アクチェは指で空をかき回してみせる。まるで大妖精ニーヴをからかうように。
「何万年もかけて形にした人類の進化。妖精はその“結果”だけを盗み取った。いいかいアイリス? この世で最も効率的な行為とは盗むことだ。この世で最も賢いのが妖精だというのなら、それをしないわけがない」
「……そんなのフェアじゃない」
「神の行為を人間の尺度で考えるものじゃないよ。……まぁ、僕が面白いと思って作った仮説だから鵜呑みにされても困るけどね」
アイリスは複雑な気持ちになる。アクチェの物言いは傲慢だが、あながち間違ってもいない。だが面白いという理由であれば仮説とは言えない。それは娯楽だ。
「私は信じないから」
「いかにも人間らしいね」
かすかに笑みを――ひどく疲れたような――浮かべて、アクチェはさらにこう言った。
「みんな信じたいものしか信じない」
その声は達観しているような、あるいは諦めているような――あるいは実体験のような――そんな圧し掛かるような響きがあった。




