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アンドリューの屋敷は円柱を切り取ったような形をしていた。3枚ほど重ねたパンケーキに似ているといってもいい。
招待客用の大きな扉があるにはあるが、アイリスは正規の招待客ではないのでここを使えない。
一般家屋の壁は漆喰で出来ている。
叩けば砂糖菓子のように脆く崩れやすい。だからいともたやすく泥棒に侵入される。
無論、アンドリューの屋敷は難攻不落。錠前も頑丈に作られている。
だが隣接している倉庫は漆喰で出来ていた。
埃臭い倉庫を抜けると、洒落た空間が広がっていた。
飾られている装飾品はどれも名だたる古美術品であったし、シルク製のテーブルクロスに並べられているのは金食器。贅を見せびらかす男の心が見透かせるようであった。
屋敷の中央はくりぬかれ、そこにあったのは中庭だった。ティル・ナ・ノーグで外に庭を造るという概念はない。泥棒の侵入を防ぐため、外側に侵入口となる窓を作らない。庭は内部に作り、内側に作った窓から光を取り込むのだ。
金のあるアンドリューは、さらに一工夫加えていた。
中庭に池を作っていたのである。
池の水面が反射板の役割を果たし、屋敷を光で満たしているのだ。
「どうですか? うちの金魚は?」
客人に声をかけている案内役の姿に、アイリスとアクチェが気付いた。
視線を向けると、池に金魚が泳いでいるのが見えた。
確かにきれいな金魚だと思う。重力から解き放たれたその姿は。
揺らめく波紋が白磁のような肌を彩り、ブロンドの髪が揺らめいている。
――なんというか、とても理想的な健康体と言える金魚だった。
おそらくは皆、雌だろう。あと服を着ていない。
いい趣味だね、とアクチェが乾いた感想を漏らし、最っ低、とアイリスが率直な感想を吐き捨てていた。




