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The Tír na nÓg 〜ティル・ナ・ノーグ〜  作者: 佐藤つかさ
第二章 承
53/222

6-1

 アンドリューの屋敷は円柱を切り取ったような形をしていた。3枚ほど重ねたパンケーキに似ているといってもいい。

 招待客用の大きな扉があるにはあるが、アイリスは正規の招待客ではないのでここを使えない。

 

 一般家屋の壁は漆喰しっくいで出来ている。

 叩けば砂糖菓子のようにもろく崩れやすい。だからいともたやすく泥棒に侵入される。

 無論、アンドリューの屋敷は難攻不落。錠前も頑丈に作られている。

 だが隣接している倉庫は漆喰で出来ていた。

 

 埃臭ほこりくさい倉庫を抜けると、洒落しゃれた空間が広がっていた。

 飾られている装飾品はどれも名だたる古美術品であったし、シルク製のテーブルクロスに並べられているのは金食器。ぜいを見せびらかす男の心が見透かせるようであった。

 

 屋敷の中央はくりぬかれ、そこにあったのは中庭だった。ティル・ナ・ノーグで外に庭を造るという概念はない。泥棒の侵入を防ぐため、外側に侵入口となる窓を作らない。庭は内部に作り、内側に作った窓から光を取り込むのだ。

 金のあるアンドリューは、さらに一工夫加えていた。

 中庭に池を作っていたのである。

 池の水面が反射板の役割を果たし、屋敷を光で満たしているのだ。

 

「どうですか? うちの金魚は?」

 客人に声をかけている案内役の姿に、アイリスとアクチェが気付いた。

 視線を向けると、池に金魚が泳いでいるのが見えた。

 確かにきれいな金魚だと思う。重力から解き放たれたその姿は。

 

 揺らめく波紋が白磁のような肌を彩り、ブロンドの髪が揺らめいている。

 ――なんというか、とても理想的な健康体と言える金魚だった。

 おそらくは皆、メスだろう。あと服を着ていない。


 いい趣味だね、とアクチェが乾いた感想を漏らし、最っ低、とアイリスが率直な感想を吐き捨てていた。

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