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私は何をしているのだろう。
何度目かになる述懐を、アイリス・リベルテは心の中で繰り返していた。
VIP用貴賓席を離れていくつか歩き回った後のこと。
相変わらず衣装はパーティードレスのままだし、天馬騎士団の隊服はあの洋服棚に隠したままだ。何かあった時用に取っておくことにしたのだ。
花をあしらった髪飾りがゆらゆら揺れるのは、アイリスがきょろきょろと辺りを見回しているからだ。
ここはゲストを迎えるための野外レストランであり、アイリスはその一望を覗くことができる場所にいた。
ここは歌姫用のステージであり、アイリスがその歌姫だからである。
「…………」
人々の奇異の視線が痛い。
隣にいるピアニストが何とも言えない表情を浮かべている。それはそうだろう。本来来るはずだった歌姫が欠席していて、いざ代打で駆け付けたのがこんな年端もいかぬ女の子なら。しかも緊張して今にも泣きそうであれば尚更だ。
こうなったいきさつは、話せば実に単純だ。
アクチェとこのレストランのオーナーが仲良しであった――今度は麻薬のやりとりはなかった――こと。
本来レストランで素晴らしいパフォーマンスをするはずだった歌姫が、出会った貴族と恋に落ち、あまつさえ二人でランデブーしようなどと言ってプルミエールを出て行ってしまったこと。
そして最後に。アクチェがアイリスを紹介して「この子、歌えますよ」などとみんなの前で言い放ちやがったことだ。
歌姫の欠席に頭を抱えていたオーナーはここぞとばかりにアイリスを絶賛し、あれよあれよという間にステージに送り出されたというわけだ。
そして今に至る。
何だろう。今なら世界中を呪える自信がある。とりあえず、舞台袖でニコニコしているアクチェの顔面にはあとでパンチする。絶対する。
歌なんて夜に気楽に歌うくらいしかやったことがない。
プロのように毎日歌ったりボイストレーニングをして磨いているわけではないのだ。
とはいえ――アイリスは考える。
嫌なことは長引かせても解決しない。解決法はたった一つ――終わらせることだ。
すうと息を吸い、アイリスは覚悟を決めた。




