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The Tír na nÓg 〜ティル・ナ・ノーグ〜  作者: 佐藤つかさ
第二章 承
41/222

5-4

「もう少し楽しんだらどうだい? ここはファッション素材の見本市だ。魔法使いが身にまとう衣服のね。世界中から集められた最先端の流行と、最新鋭の技術が並んでいて、しかもその知識を共有できるんだ。魔法使いにとっては楽園だろうね」

「私は騎士なの。知ってた?」

 

 アイリスの反論に、少年は口元をゆがめる。

 

「よく知ってるよ。そのしかめっ面と、壁を背にして死角を作らない足の運び方からね。あと右の太ももにナイフを隠しているだろう? 右の足跡が左よりも深く沈んでいるからね。だが今の君はゲストで潜入中だ。分かったらその騎士モードを封印して、パーティーを楽しむんだ」

 フリ・・でいいから、と強調されて、渋々ながらアイリスは受け入れることにした。

 少年にカクテルを手渡されて、やはり一気に飲み干した。

 

「もっと味わえばいいのに」

「飲まないとやってられないの」

 

 自棄気味にアイリスはつぶやいた。自分から言い出したとはいえ、どうしてアンドリューが狙われるのか分からないし、詳細は分からずじまいだし、何より出会った時からずっと少年に振り回されている気がする。そういえば彼の名前すら知らない。

 

 睨みを利かせて怖がらせてやろうかと思ったが、残念ながら少年は薄く笑うだけだった。

 

 開催を伝える花火が上がる。闇夜を照らす大輪の花。

 その輝く花を背にして、少年は薄く微笑む。ひどく妖絶で――同時に底知れない不気味さがあった。

 心底楽しんでいる口調で、少年はささやく。

 

「君の知らない世界へようこそ」

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