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「もう少し楽しんだらどうだい? ここはファッション素材の見本市だ。魔法使いが身にまとう衣服のね。世界中から集められた最先端の流行と、最新鋭の技術が並んでいて、しかもその知識を共有できるんだ。魔法使いにとっては楽園だろうね」
「私は騎士なの。知ってた?」
アイリスの反論に、少年は口元をゆがめる。
「よく知ってるよ。そのしかめっ面と、壁を背にして死角を作らない足の運び方からね。あと右の太ももにナイフを隠しているだろう? 右の足跡が左よりも深く沈んでいるからね。だが今の君はゲストで潜入中だ。分かったらその騎士モードを封印して、パーティーを楽しむんだ」
フリでいいから、と強調されて、渋々ながらアイリスは受け入れることにした。
少年にカクテルを手渡されて、やはり一気に飲み干した。
「もっと味わえばいいのに」
「飲まないとやってられないの」
自棄気味にアイリスはつぶやいた。自分から言い出したとはいえ、どうしてアンドリューが狙われるのか分からないし、詳細は分からずじまいだし、何より出会った時からずっと少年に振り回されている気がする。そういえば彼の名前すら知らない。
睨みを利かせて怖がらせてやろうかと思ったが、残念ながら少年は薄く笑うだけだった。
開催を伝える花火が上がる。闇夜を照らす大輪の花。
その輝く花を背にして、少年は薄く微笑む。ひどく妖絶で――同時に底知れない不気味さがあった。
心底楽しんでいる口調で、少年は囁く。
「君の知らない世界へようこそ」




