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「天馬騎士団だ! 両手を上げて床に伏せろ!」
決して広くはない部屋に9人以上の騎士がなだれ込み、机でものづくりに励んでいた男を拘束する。少なくともケーキではないことは間違いない。
机に積まれているのは木炭と硫黄、そして肥料。――黒色火薬の原料だ。
壁に張り出されているのは、ガーランド家の屋敷の見取り図とペルセフォネ・ガーランドの肖像画。爆弾の設計図――少年が盗み出したものとほぼ同じ。やはりこの男で間違いない。
他の騎士たちが黙々と部屋の四方六方――さらには落ちているゴミまで神経を張り巡らせて入念にチェックしていく。
こういった犯人は、爆弾をどこに仕掛けているかわからない。自宅にすら。
以前似た犯人の自宅に踏み込んだ時は、壁という壁にワイヤーが張り巡らされ、そのワイヤーすべてが何かしらの爆弾の安全ピンとつながっていたのだ。現場に駆け付けた騎士はみな「怪物の口の中にいるみたいで生きた心地がしなかった」と供述している。
爆弾とはパズルのようなものだ。緻密な計算で組み立てられ、経験によって一切合切の無駄を省き、洗練されていて、何より狂っている。
だから入念に調べ、罠がないことを確認すると「クリア!」と叫んで伝達していくのだ。
すべての情報を収集した騎士が、一番年上の騎士に歩み寄る。
「分隊長。問題無しです」
分隊長はうなずき、拘束している男に言い放つ。
「ノア・ハイデリヒ。お前を逮捕する!」
それが、72時間以内に起こるはずだった“脅威”が消えた瞬間だった。
そしてそれは間違いなく、アイリスの手柄である。




