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The Tír na nÓg 〜ティル・ナ・ノーグ〜  作者: 佐藤つかさ
第一章 起
32/222

4-1

 ティルナノーグは貿易を大きな収益源としている。

 南西の商業エリアは港や倉庫など、海運に必要なものがすべて揃えられている。当然ながら規模も大きい。

 そしてそれだけ巨大だと、腐敗もどこかしら生まれてくるのが世の常である。

 

 後ろめたい職業を持つ者に提供できる隠れ家を倉庫に偽装する。あるいは危険な魔導兵器や希少動物を密輸――たいていの場合は天馬騎士団から厳しい取り締まりを受けるのだが、こういった存在は精力逞しい害虫のごとく生き残り、それどころか犯罪の温床たるこの環境をできる限り維持したい犯罪者同士で手を取り合い、そこらかしこにアジトを作っては、300を超える膨大な法律と口うるさい騎士をせっせと呪っているのだ。

 

 そのためか、時として致命的なまでに不用心な異国の海運業者が、安い地価と労働力を見込んで、新しい拠点を作ろうと夢見ることが往々にしてあるのである。

 そして時として極めつけに愚かな輩が犯罪者のアジトに施設を作り、操業にまでこぎつけるケースも少なからず存在する。

 そういった時は、ささやかながら直接的な警告――あるいは暴力――により、お引き取り願うのだ。

 

 それら悲劇の顛末てんまつによって、創業からわずか数日で倒産あるいは閉鎖に追い込まれた倉庫跡が少なからず、このティルナノーグの港に散見される。

 

 その倉庫のドアが蹴破られたのは、陽が沈み切った頃だった。

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