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「相手はノア・ハイデリヒ。通称“薬剤師” 専門は地質学と物理学。ちなみにエルフ。ブリタニアで革命家を気取っていたが、国を追放されてからは、テロリストに転職した」
それはのちに刑務所でまた出会うことになる、史上最悪の爆破テロを企てた男の名である。
だが今のアイリスはまだ未来を知らないし、それ以上に重要なことが頭を占めていた。
ペルセフォネ・ガーランドが72時間以内に死ぬ。
そんなことがあるだろうか?
人を殺すことがあっても、彼女が人に殺されることなど断じてない。たぶんこの世界すべての人類が滅ぶことがあっても彼女は必ず生き残る。
だから問う。
「証拠は?」
アイリスの言葉に、少年は巻物を投げて寄越す。
腿の間を転がるそれを拾い上げて、アイリスは紐を緩める。束ねられた何枚もの羊皮紙を広げると、獣臭さとインクの臭いが鼻を衝くいたが、それが些細なことであると、すぐに理解できた。
彼が購入した化学薬品。ペルセフォネ・ガーランドの屋敷の見取り図。綿密に調べ尽くされた彼女の行動スケジュール。どれ一つをとっても決定的といえる証拠だった。
おそらくは、合法的なやり方で手に入れたわけじゃないだろう。
その答えは少年の口からあっさりと出た。
「奴の家から盗み出した」
「盗んだ?」
アイリスはオウム返しに言った。この少年は今、盗んだと言ったか? 末端にいるとはいえ法の番人たる天馬騎士団に向かって? いや、だからこそか?
「僕は友人が多い。愉快な怪盗とも知り合いでね」
「…………」
資料の山を前にアイリスは考える。
“精神の宮殿”に入る必要がある、と。




