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「名前を言ってはいけないあの人」
呟き、少年は嫣然と笑う。それはペルセフォネの通り名だった。
「殺意溢れる竜巻。怒る炸薬。闊歩する活火山。おしゃべりギロチン。災厄の騎士。数々の通り名で呼ばれているね。最近有名なのはあれかな? 北方の彗星女王」
確かにそう呼ばれている。彗星のように美しいから、なんてセンチメンタルな理由ではない。降り立った場所を隕石のごとく焦土と化すからだ。
「大妖精ニーヴすら恐れる暴君。それとも君はこう呼ぶのかな?」
――母上。そう少年は言った。
それは違う。断じて違う。なぜなら父も母もとうの昔にこの世にいないからだ。
「……あの人は身元保証人。それ以上じゃない」
「冷たいね。でも放っておけるほど薄い仲じゃないはずだ。ペルセフォネには今日まで育ててもらった恩義があるはずだからね」
敬称を省いて彼は名を呼んだ。それがアイリスの神経を逆なでる。
「何が言いたいの?」
いい加減苛立ってきた。物言いが自然と刺々しくなる。
しかし彼が放った言葉が、アイリスの胸を劈くこととなる。
彼はこう言ったのだ。
「72時間以内に彼女は死ぬ」




