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少年を助けようと決意したのは、彼の自殺現場を目撃した時だ。
非番で剣を持っていなかったからブーツに仕込んでいるナイフで首の縄を切り裂いた。
それから小一時間彼に説教したと思う。
正直アイリスも動転していて、よく覚えていないのだ。
全てのことの顛末を聞いて、それから義憤に駆られたアイリスがどうしたかは、もう語るまでもないだろう。
やったことに後悔があるか?
答えはノーだ。
なぜか?
答えは簡単だ。
未来を変えた、その実績があるのだから。
放っておけばあの少年は死んだだろう。天馬騎士団が見つけ、然るべき司法解剖を行い、裏を取り、やがて店長が犯人だと分かるだろう。罪人はよくて鞭打ち20回。
20回も打たれば人は死ぬ。一生言えない傷を店長は背負うだろうし、資産も没収だ。
それでも少年が生き返ることはない。
それは転がった石が戻らないのと同じこと。流転を止めることは叶わない。
叶わぬなら、転がる方向を変えてしまえば良い。
彼が首を括る前に店長に楔を打ち込んだ。今度やれば店を貶める決定的な証拠を世間にばら撒くと警告もした。
店長には罰を。そして少年には生を。
正しいことをした。
その代償は――罵倒と謹慎だった。




