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The Tír na nÓg 〜ティル・ナ・ノーグ〜  作者: 佐藤つかさ
第一章 起
22/222

3-1

 騎士学校センチネルはティルナノーグ南東に建てられた歴史的建造物である。

 元は美術館であったが、建物の堅牢を見込んだ天馬騎士団が買い取り、第八師団本部を兼ねた教育学校へと生まれ変わった経緯を持つ。

 それゆえか天井を支える柱には一角獣ユニコーン彫刻レリーフが施されていたり、部屋の一角には大きな彫像が置かれていたりする。一糸まとわぬ男女がずらりと壁に並んだ廊下を歩くのはやや気まずい。しかもその彫像は夜に動くともっぱらの噂だ。

 それでも、このレンガ造りのモダンな校舎に通いたいと志願する生徒は数知れない。

 理由は、教会以外でも語学を学べること。騎士になれば安定した収入――家族を養うのに困らないだけの――が得られること。

 

 そして、正門で出会った男女は結ばれるという言い伝えだ。

 

 レンガを積んた鉄門のアーチ。そこで告白した男女は永遠の絆で結ばれると。

 次第に、花壇の花を摘んで教室に生けることが条件となり、いつの間にかノートに好きな人の名前をびっしりと埋める条件に代わり、最後に窓から飛び降りることが条件となったところで、ようやく大人たちからのストップがかけられた。

 

 その若い男女の妄執が詰まった第八師団本部正門を抜けて、アイリスはブーツのかかとで歩道を叩く。

 味気ない歩道。左右の花壇には雑草が生い茂り、整備されているのか荒れ果てているのかわからない。

 勤務時間を終えたというのに、気分は憂鬱ゆううつだ。

 

 アイリスは考える。

 人を助けたことは罪か?

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