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「そういやァよ」
不意にユリシーズが口を開いた。
用が済んだので席を立とうとしたエドゥアルトを、ユリシーズが無理やり座らせた後のことだった。
「何だよ」
「まぁ聞けって」
度数の高いアルコールをかなり胃に流し込んでいるというのに、ユリシーズにはまるで酔っている気配がない。
それなりに付き合いが長いエドゥアルトだが、彼が酔いつぶれている姿を観たことがない。一度だって。
「俺様、養鶏家でバイトしたことがあるんだよ」
「……今、お前の隣で俺、鶏肉召し上がってんだけど?」
「――でな?」
「無視かよ」
「そこで食用鶏ってやつを育ててたんだ。窓のない鶏小屋で、松明を絶えず炊き続けてた。明かりを絶やさなかったのは、飯を食わせ続けるためだ。それでも足りず、もっと太らせるために興奮剤まで注入してた。――この目で見たんだが、もう鶏とは言えねえ姿でよ。でも次々死んじまった。急激に成長させられてるから、心臓がもたねえんだ。でもやめなかった。死んだって一向にかまわないんだ。良いのが生き残れば万々歳」
「ものすごい遠回しに、俺にダイエットしろって言ってね?」
「そうじゃなくてよ。――周り見てどう思うっつってんだよ」
「周りだァ?」
ユリシーズの言葉通りに、エドゥアルトは辺りを見回してみる。いるのはアンドリューが招待した沢山のゲストだ。
業界人や、国すら買える金を有する大富豪。そして――魔法使い。
「このティル・ナ・ノーグじゃ魔法使いは増加傾向にある。あらゆるアイテムと英才教育を受けて、ぶくぶく太ってやがる。それでも足りずにプルミエールなんてイベントまでおっぱじめたんだ。お前の愛するティル・ナ・ノーグのど真ん中でだぜ? ……なぁエディ。あらゆる奇跡を意のままに操るこいつらは、果たして人間って言えるのか?」
エドゥアルトはしばし考える。
魔法使いは希少な存在だ。だがここ数年人口比率が増えている。しかも大多数はこのティル・ナ。ノーグでだ。
しかも魔法使いは人種を問わない。エルフであろうと人間であろうと、何なら動物が魔法使いになったケースすらあるのだ。彼らがどのような力を持つのか、誰にもわからない。そのパターンはきっと魔法使いの数だけあるのだろう。
そういう意味でなら、雑多な人種が入り混じったこの街は、魔法使いにとって理想的なモデルケースと言えるだろう。
そう、だとしたら――
エドゥアルトの中でとんでもない仮説が導き出される。
「ティル・ナ・ノーグは、妖精が作った養鶏場だって言いたいのか?」
冗談だろとつぶやいたが、ユリシーズは笑わなかった。




