-2
「はぁ…またなの?本当にどうしてこうなってしまったのかしら」
そう責めるように声をかけてきたのは、シリルがいないタイミングを狙って会いにやってきた先王妃…シリルの母親であった。
現国王であるウォルターの母でもあり、先王妃として今でも国で大きな影響力を持つ彼女。先王妃とはこの国に嫁いで来てから何度も、こうしたお茶会に呼び出されていた。
ルチアは鋭い視線を向けられながらも静かにお茶を口にする。かつてのミリウスとのお茶会を思い出すルチア。
あの当時も重苦しいお茶会だったが、今思えばずっと気が楽だった。先王妃とのお茶会は機嫌を悪くしないタイミングでお茶を飲みきらないと、時には熱いままお茶を頭から掛けられることになる。面倒なトラブルを回避するためにもルチアはいつだって静かに耐えていた。
「もう5年よ?5年も子作りを続けて、一度もその腹に子を宿すことができないなんて!…はぁ、どうしてあの子はこんな女を迎え入れたのかしら」
それはルチアの心を抉るような言葉だった。
最初は敵意なんてなかった。貴族令嬢として確かなマナーを身につけており、シリルを射止めた美貌を持つことからも誰もがこの結婚を祝福した。
しかし、どれだけ関係を持っても後継者であるシリルの子を授かれないルチアに対して、先王妃を中心に厳しく当たるようになったのである。
それは現王として即位したウォルターが亡くなった妻に愛を誓っており、後妻を取らないと宣言していることも大きく影響していた。一応、跡継ぎとしてウォルターには亡き妻が残した子であるロニーがいる。
ただ、そんなロニーも権力争いにまきこまれていつ命を落とすか分からない以上、ルチアが後継者を宿すのは2位の継承権を持つシリルの妻としての役目だった。




