-6 デリック視点
「姉さん、婚約おめでとう」
「えぇ、ありがとうデリック」
日に当たって輝くティアラと同じくらいに眩しく笑顔を向けてくる姉のルチア。デリックにとっては久しぶりの姉の姿だったが…心の中は正直どろどろとした感情で溢れていた。
というのも、誰よりも大切な姉がまさかのあの男へと嫁ぐことになってしまったからである。
(本当に失敗した…)
それは決して顔には表さない、デリックの本心だった。
ルチアが隣国の第2王子であるシリルに嫁ぐことが決まって、デリックには代わりに姉がいた領地を今後管理する仕事が任された。ここ最近は週末に姉に会いに行くこともできないまま、王都での仕事や学園の卒業課題などに追われていたデリック。
あの日の失敗をきっかけに、全ての歯車が崩れてしまったのだ。
デリックは久しぶりに会った姉が、今まで以上に幸せそうにしているのを見てちりちりと胸が痛む。
(あのまま冴えない男と幸せになんてなれない結婚をしてくれれば…いつだって、俺は姉さんの傍にいれたのに)
彼女の最も特別な存在で居られる弟という地位は、こんな時に本当に腹立たしいほどに役に立たない。それでいて嫌われるのが怖い自分は、自分の想いを絶対に口に出来ないと分かっていた。
デリックはいつもとは違って少し浮かれたような姉の話を聞きながら、ただ虚しさを味わう。
それでも今日もまた気持ちを隠し、デリックは彼女の誰よりも信頼できる弟としての仮面をかぶるのだった。




