-5
「ちゃんと父から結婚許可ももらって、国での問題も解決してきて…王都にいる公爵夫妻にもきちんと話を通してきました」
そう話す彼は、手にしていた宝飾の付いた箱を開ける。中には輝かしいティアラがあった。
隣国で王家に連なる女性だけが身につけられるというそのティアラは、日の光を反射するようにしてキラキラと輝く。
「俺は絶対に貴方を傷つけたりしません!1人で放置して寂しくさせることも、惨めな思いをさせることも絶対にないと誓います」
ほんの数カ月顔を合わせなかっただけで、シリルは以前よりもずっと別人に思えるほど大人っぽく変わっていた。きっと様々に揉まれて、不安な日々を過ごしてきたのだろう。
何度も彼から送られてくる手紙から、彼はルチアのことを考えて毎日を過ごしていたことを知っていた。どう返していいかわからずに返事を返せずにいるルチアに対して、彼は欠かさず何度も何度もルチアに愛を告げる手紙を送ってくれていたのである。
「どうか…俺を選んでください!」
そう話すシリルは、跪いて頭を下げながらもこちらへとティアラを差し出す。それは、隣国の王家に伝わる正式なプロポーズだった。
ルチアは必死なシリルの姿に、愛おしさで胸がいっぱいになるのを感じる。
ただ…ルチアの中でまだ大きな不安があった。
「…私は凄く重たい人間です。愛している人が他の女性と話しているだけで妬ましくてたまらなくなるし、引き離してやりたいと思うことでしょう」
ルチアが口にしたのは、ここ最近シリルへと自覚した感情だった。今までミリウス相手では自覚することなかったどろどろとした感情が、ずっと渦巻いているのである。
「本当に、そんな私でいいのですか?」
ルチアの言葉を聞き、驚いたような表情でこちらを見つめるシリル。しかし、それから間もなく、彼はこぼれるような笑顔をルチアへと向けた。
「もちろん!俺にはこれから先も貴方だけですから!」
シリルの言葉を聞いて涙が溢れるのを感じながら、ルチアは震える手でティアラを受け取ることにする。
「おめでとう」と初めに声を掛けてくれたのはミリウスであり、その後に使用人たちからも拍手や応援の声が向けられることになった。




