89/131
-4
あの日の顔合わせの後、ルチアとミリウスは婚約破棄を円滑に進めるように手紙でやり取りしたり、時には共に領地を視察して今後についての施策などもまとめていった。
お互いにこの領地のことも領民たちのことも、見捨てることはしたくないと思っているからである。
自分たちがいなくなった後に引き継ぐことになる人に向けて、この領地がこれからも豊かでいられるように手を加える。
ただ、今までほとんど会話してこなかった2人かいきなり親しくなったことや、共に行動することが増えたことが災いして、「ルチアとミリウスは結婚式に向けて動いているらしい」という噂が周囲に広がっていることをルチアたちは理解していなかった。
失敗したと気づいたのは、不安そうな顔で駆け付けてきた彼と久しぶりに顔を合わせた頃である。
「っ、やっぱり俺は婚約者には勝てませんか?」
それはちょうど、ミリウスと今後のことについて話し合っている最中のことだった。突如として屋敷にやってきたシリルは、ひどく不安そうな顔をしながらミリウスとの会話に割り込んでくる。
ここまでどれほど急いできたのだろう。彼の額には汗が滲んでおり、息も酷く乱れていた。




