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ミリウスの言葉に驚いていたルチアだが、その後にふつふつと怒りが湧いてくる。目の前の彼はあまりにも自分勝手であり…そして、他の男を選ばされることも納得できない。
(私は、私の意思でミリウス…貴方を選んだの)
「勝手ね」
「…すまない」
「貴方への嫌がらせをするなら、きっと私は貴方の婚約者でいたいと望んでいた方が良いのでしょう?」
そんな言葉と共に、ルチアの瞳からは涙が溢れてくる。今はもう、自分の感情を制御できなかった。
彼が自分を振り向かないと分かっていながら、どれほど待ちつづけていただろう。幼い頃に婚約が決まって10年以上。そして、もう結婚間近だったはずなのだ。
いつだってドレスも宝石も、彼の目に付くように着飾って…そうして彼が早々に帰るたびに胸を痛くした。馬鹿みたいにまた1ヶ月後には関係が変わるかもしれないと、淡い期待を持ち続けて…そうして傷つく日々だった。
今までの時間は何だったのだろう?
幼いころからずっと、自分の婚約者は彼だと告げられ…どれだけのものを諦めて、傷ついてきただろう。
確かにミリウスとの将来に不安を抱いていた。彼と結婚しても幸せになれないかもしれないと悩んだが…それでも自分はつい先日、シリルの手を振り払って貴方を選んだのだ。
「君に罪はないよ。ただ、あの方に愛された方がずっと幸せになれるはずだ」
「…どうして私の幸せを貴方が決めるの?」
「はは、本当に君は手厳しいよね」
初めてのことだった。彼とこんなにも会話が交わせるだなんて。
「俺たちはもし結婚したとしてもそれなりにうまくやり遂げるだろうし、この領地を守っていけるだろう。でも、きっと君はそんな生活にどこか引っ掛かりを覚えることになるはずだ。もし子供が産まれて、そんな違和感が強まったら…俺はそれこそ最悪な結末だと思う」
どこか抽象的な彼の言葉。けれど、ルチアは言葉の意味が確かに理解できていた。
彼の言葉は本当にその通りであり、これから先の未来でルチアはきっとシリルのことを忘れ去ることができないと思う。
シリルを見るたびに胸を痛めて、彼が他の女性と結ばれた時にドロドロとした感情が渦巻く。きっと、そうなるだろうと理解できた。
そしてそんな感情は、ミリウスが相手であれば起こり得ないと理解できる。
ルチアはミリウスと婚約者じゃなくなったとして、きっと彼を恋焦がれることはないだろう。そう確かに感じていた。




