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それはあれから、暫く月日が流れた日のこと。




「ふふっ、愛しているわ」


ドアから漏れ聞こえてくる声を聞き、ジュールは無意識に手に力が入ってしまったことに気付く。手にしていたのはベルが好きだと話していた甘い果実だったのだが…今はもうべたべたと果汁が腕まで滴っていた。


(…どうしてこんなことに)



自分だけに向けてくれるベルの熱い視線や笑みにどれほど心が踊ったのか分からない。もう全てがどうだっていいほど、ジュールは彼女に捧げたいと思ってしまったのだ。


こうして何もない屋敷に追いやられたとしても、彼女となら乗り越えられると思っていたはずなのに…。




「本当に?貴族であるあの男よりも俺がいいのかい?」

「私は嘘なんて吐けないわ。ねぇ…信じられないなら、私の体に聞いてみて」


いつしか聞いたことが台詞が自分ではなく、他の男に向けられているのを聞きながら、ジュールの中で少しずつ後悔が押し寄せてくる。



(自分は…こんな女のために全てを捨ててしまったのだ)




ジュールは楽しそうな笑い声が聞こえる部屋を背に、少し離れた自室へと向かう。なにもないただ広いその部屋には、いつしかディーナや子供たちに買ったはずの土産ものがそのまま置かれている。


煌びやかなはずの包装紙には埃がつもり、菓子の包みからは腐ったような甘い匂いが漏れだしていた。






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