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ディーナは自分を庇うように前に出てきたジュールに座るように促すと、「あの子について話しましょう」と彼らに声を掛ける。
今重要なのは、小さなこの子の存在だ。
「ラジェイア公爵がお姉さまにあの子の存在を知られたくないと話すなら、私が力を貸します」
そう口にしたディーナに、隣にいたジュールが「離婚は出来ない」と即座に反応した。彼の言葉からもきっと、以前ラジェイア公爵から提案された再婚話を受けようとしているのだと勘違いしているのだろうとわかる。
ディーナは安心させるようにしてジュールの手を握ると、続きを口にした。
「私から双子が生まれたことにしましょう。幸い、うちの子とこの子は数週間ほどしか違わないですし、体の小さなこの子なら同じ時期に生まれたとしてもおかしくない。それに、公爵家で産んだのだから、情報の書き換えも簡単なのでしょう?」
そういったディーナの提案に、ラジェイア公爵もジュールも驚いているのが分かる。そんな状況で、ディーナは構わず話を続けた。
「もし、この子の目のことを聞かれたら上手く誤魔化す方法があります。元々隣国で暮らしていたというトラヴィスが教えてくれたのですが、隣国では突如として姿を消した王子がいたらしいんです。それも凄く都合が良いことに、誰もその行方を知らないんですよね」
ディーナはトラヴィスと船に乗り込むまでの間、彼が教えてくれた話を思い出す。それはただの子供に聞かせるようなお伽話のような内容だったが、ディーナは構わず続けた。
「もちろん、根も葉もない噂…だとしてもいいんです。どこかでなにかが繋がっているかもしれないと思わせれば、私たちの間になにかの因果で隣国の王家の特徴を持つ子が生まれてもおかしくないと思いませんか?」
「いや、流石に無理があるだろう」
「いいえ、認めざる終えなくなるはずです。公爵様は私のお腹からこの子が私たちの子と一緒に生まれたという事実だけ作ってくれれば問題ありません。そもそも私たちは誰の関与もあり得ないほどにお互いだけしか見ていない夫婦だと噂で知られています。それにこれから先も、私たちは仲睦まじい夫婦を演じていくつもりですから」
自分の計画があまりにも無謀であることはディーナも理解していた。上手くいく保証はない。ただ、この国で絶大な力を持つラジェイア公爵が子供がディーナの腹から生まれたのだと保証してくれれば、誰も出生を疑うことはできないだろう。
せいぜい流れたとしてもディーナが他の男と過ごしていたなんて噂だろうが、ディーナはそんな噂を否定するためにもこれから先も、夫はジュール以外考えられないという振る舞いを続けていく。
それは…これまでと同じように。
イエリア侯爵家の運命の愛で結ばれた夫婦。そして、彼は自分にとって何よりも大切な存在であり、愛する夫だと…そう理想の夫婦を演じ続けるつもりだった。




