-6
その後、それぞれ治療を終えたジュールとディーナ、そしてラジェイア公爵が集まって話をすることとなった。トラヴィスはハワードに連絡をしてくれたようで、「今すぐここに来るらしい」と教えてくれた後は、シスターたちを連れて部屋を出ていった。
「…侯爵夫人には本当に感謝する。あの場でこの子を連れて降りてきてくれたこと。この子は…姉さんを苦しめる存在なんだ」
その後、静かに話し始めたラジェイア公爵は、きっと言いづらいだろう秘密まで話してくれることになった。
ラジェイア公爵の姉は子供が出来ない体質だと、隣国の王子と結婚後に暫くしてから判明したこと。それでも隣国の王子との関係は揺るがず、愛し合って過ごしていたこと。
…しかし、ベルが現れてからすべてが狂わされるようにして、王子が突然ラジェイア公爵の姉の不妊を責めるようにして、傷つけてきたことなど。
ディーナはそんな話を聞く中で、ベルが現れた当時、自分が感じた虚しさとよく似ている感覚だと理解できた。
「この子の存在を知れば、姉さんは不妊を責められた当時のことを思い出してしまう。だからこそ、出来るならこの子の存在は姉さんには知らせたくない」
ディーナはラジェイア公爵の言葉に以前感じた違和感を思い出し、彼にとっては姉の存在はただの姉弟にしては特別な感情を持っているのだと理解できる。隣を見ると、ジュールも同じことを考えていたようで小さく頷いていた。
そんなことからも、ディーナは彼らの関係をそれ以上を追及するつもりはなかった。
ただ…問題はこの子の存在だろう。
「それならこの子はどうするつもり?引き取った後、誰にも知られないようにして殺すというの?」
ディーナの言葉を聞き、ラジェイア公爵は目線を逸らすようにしてシガ―に火をつけて煙を大きく吸った。
「…トラウマがある。俺には人を殺せない」
煙と共にそう吐き出したラジェイア公爵は、胸元からナイフを取り出すとディーナへと向ける。咄嗟に、隣にいたジュールがディーナを庇うようにして身を乗り出すものの、ラジェイア公爵がナイフを持つ手は小刻みに震えていた。
「過去にな、色々あってナイフを人に向けることはできても、その先が出来ない。本当は腹を割いて子供を取り出してやったのも俺じゃない。俺はあの馬車の中で、何もできずにただ苦しむ侯爵夫人を見ているしかできなかったよ」
その後、ラジェイア公爵は口を閉ざしてしまい、彼のトラウマのその先を聞くことはなかった。
ラジェイア公爵と姉の関係、そのトラウマなどは長くなりそうなので、番外編でいつか描かせてください。今はお話を進めていきます…!




