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「赤子のことは突然で乳母の手配が出来ていなかったため、今日は使用人のうち、同じくらいの赤子を持つ者を乳母として迎え入れました」
ハワードのそんな話を聞きながら執務室に入ったジュールは、乳母の元で乳を飲む赤子の姿を目にする。乳母にどこかで見覚えがあると感じて…ジュールはついさっき、一緒だったイアンのことも思い出すのだった。
(あぁ…彼女がイアンの)
ジュールは彼女の姿を見て、確かに過去にぼんやりと彼らと関わったような記憶を思い出す。一方で、乳母の方もジュールの姿に気付くと、こちらのぺこりと頭を下げて来るのだった。
「旦那様にもう一度、赤子の状態を報告してくれ」
そんな中、ハワードの言葉に側に控えていた侯爵家付きの医者がジュールに向き合う。ぐったりとしていた赤子はついさっきよりも頬に赤みが戻ってきた状態であり、弱い力ながらも頑張って自分で乳を吸っているようだった。栄養失調に近い状態ではあるものの、自分で乳を飲める以上、少しずつ回復していくだろうというのが医者の見解だった。
しかし、その後に医者は少し話しづらそうにしながら、とある言葉を口にする。
「…私が口を出すべきではないのかも知れないのですが、この子の親に当たる方は…?」
そう言って、困ったようにハンカチを汗で拭った医者はジュールに視線を向ける。そんな医者の態度は、ジュールがどこかの女に孕ませた連れ子を連れ帰ってきたとでも思ったのだろう。ジュールは肯定も否定もしないまま、医者には思ったことを口にするようにと告げた。
「で、では…。この赤子の瞳を見てもらうと良くわかるのですが、特殊な虹彩があるのが分かりますか?六芒星の形に見えるのは…隣国の王族に伝わる特徴です。更には隣国では瞳の色が紅に近いほど、王に相応しい子として知られていて…」
そう話す医者の言葉に、ハワードもジュールもすぐに赤子の瞳を確認した。乳を飲み終えた後で少し眠そうにしている赤子。しかし、その瞳には確かに医者が話すような六芒星があり、色見は…赤に近い橙のようだった。
「まさか…そんなことが」
不意にそんな声が漏れるジュール。
突然手にすることになったその子の存在は、ジュールたちを振り回す大きな存在になるのだった。




