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屋敷まで戻る馬車の中でいつしか眠ってしまったようだった。ジュールはぼんやりとした空間にいる自分が子供の頃の姿になっていることからも、いつものように悪夢を見ているのだと理解する。
「こんなことも分からないっていうの!?本当に嫌なとこばかりあの人に似るんじゃない!貴方は侯爵家の当主として立派な人にならなければいけないのよ!」
幼い頃は母によって、決して快楽主義な父のようにならないようにと厳しい教育や躾を受けていた。賭け事に溺れ、家の金も愛人や酒に使い潰してしまう最低だった父。
だからかもしれない。最初はそんな完璧主義な母によく似たディーナが苦手だった。
ただ、そんな母もいつしかジュールを置いて恋に夢中になった。
「私を母様なんか呼ばないで!私は私のために生きるの!」
厳しかった母は叔父との恋に夢中になり、あんなにも気にかけていたはずのジュールに目を向けなくなった。ジュールをまるで厄介者のように扱い、金目当てで近づいてきたような叔父はいつしか侯爵家当主のような振る舞いをしていった。
連日屋敷では父と叔父たちとの喧嘩が絶えず、物が壊れ、血が流れ…使用人たちも逃げ出ていくような家だった。
そのころからジュールも家には帰らず、転々と自分を迎え入れてくれる女性の家で過ごすようになった。身分は問わずにこの顔を好いてくれる女の元へ行き、着飾ってもらってまた別の女の元にいく。遊びと割り切っている年上女性や未亡人を好んで回っていることからも、大きなトラブルはなく…そんな生活が自分に合っているとも感じていた。
しかし…そんなある日、事件が起きてしまったのである。
噂を聞きつけて屋敷に戻った頃にはもう…屋敷は真っ黒く焦げており、中から3人分の遺体が見つかった。新聞社の記事では使用人たちに聞いたのか良くない噂ばかりが流れ、おかしな記者たちがジュールを追いかけまわすようになった。
お世話になっていた女性たちも目立ちたくないからとジュールを避けるようになり、いつしかジュールは1人になった。
誰も手を差し伸べてくれる者はおらず、自分1人では食べ物にすらありつけない無力な男。
悪夢を見る度、ジュールはそうして駄目な自分を思い出すことになるのだった。




