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重苦しい空気が流れる馬車の中で、ジュールは窓越しに景色を眺めていた。しかし、頭の中に思い浮かぶのは、ついさっきのディーナの姿である。
あんなにも会いたくて焦がれていたディーナ。
ディーナは以前から魅力的で、眩しい存在で…誰だって惹かれておかしくない相手である。実際にジュールの傍に寄ってくる男たちの中には、ディーナへの好意を隠せずにジュールから情報を探ろうとしているものだって多かった。
しかし、過去の自分はディーナのことを口煩い妻だとしか思っていなかった。彼女はジュールにとっては恩人の娘だが、それ以上でも以下でもない相手でしかない。優秀な彼女の側にいると、自分が明らかに劣っているように感じる事柄がいくつもあるからだ。
だからこそ自分は…駄目な自分でも肯定してくれるようなベルに心を許してしまったんだろう。
ジュールは窓ガラスに映った今の自分の姿を見て、溜め息を漏らす。綺麗に整えられていた以前とは違う、まるで浮浪者にも思える自分の見た目。
(…あぁ、こうしてみるとそっくりだ)
女たらしで、ギャンブル狂でどうしようもなかった父に似た自分の姿。前侯爵である父が借金に溺れ、首が回らなくなるときに見せていたのはこんな姿だったはずだ。




